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ネット上の不毛な競争 [ネット]

 先日の記事でSNS上の友達関係を見直したことを書いたが、その後も(数は多くは無いものの)意味不明なお友達申請が続いている。

 例えば、元旦にFacebookでほぼ同時に4人ものお友達申請が来た。しかも、4人共若い女性である。[ふらふら]プロフィール写真は4人共かなり近寄って少し高めの位置から撮影されている。所謂レンブラント・ライティングで、しかも、背景が良く似ているから、恐らく同じタイミングで連続して撮影したのだろう。
 「偶然が重なったにしては幾ら何でも不自然だ。こりゃー絶対Synchronicityじゃないなー」と思いながら夫々のプロフィールを見ると、当たり障りの無いことばかりが書かれているだけで、ものの見事に中身が無い。若き乙女達が何の脈絡も無く突然友達申請してくるなんて不自然極まり無いので、申請は勿論承認しなかった。数日後改めて申請者のプロフィールを見ると、既に2人はFacebook上から消えていた。
 この4人は恐らく架空のアカウントで、お友達になることで相手の個人情報を引き出す為に作成されたのだと思う。Facebookはスパム防止のため友達申請の数が余りに多い場合は自動的に止められる。止められたアカウントは使い物にならないから削除したんだろう。

 このところmixiやFacebookで突然お友達申請してくるケースが増えている。趣味や仕事などで何らかの関連があり、且つ、メッセージ等で実際に会った事は無いけれど趣味や仕事で共通点があるからお友達になりたい旨を説明した上で申請してくるのであれば申請を受ける側もある程度納得できるけれど、そういったものが一切無く申請のみされては承認する気には到底なれない。
 どうしてこのような申請が増えているのか?原因の一つは多分アフィリエイト塾やマーケティング・セミナーだと思う。

 アフィリエイトは宣伝している商品を誰かが見て購入しなければ成立しないので、アクセス数を如何にして増やすかが非常に重要で、そのためにはアクセスの元となるものが必要になる。例えば、購入を考えている人の興味をそそりそうなキーワードを鏤(ちりば)めたページ(ランディングページ)を用意し、そこに「メールアドレスを登録するだけで、無料でお得な情報が得られます」という文章と共にメールアドレス登録用フォームを用意し、登録してきたメールアドレスに対して「有料だけどもっと良い情報があるよん」と誘惑するメールを送り続けるというような仕掛けである。
 ただ、時間と手間がかかる割には得られるメールアドレスの数(見込客リスト)が少ないことが多く、なかなかアフィリエイト収入には結び付かない。分野別の見込客リストを売る業者も居るし、自分で広告サイトを運営してリストを得る方法もあるが、どちらもソレナリのお金がかかる。
 そこで登場するのがSNSである。

 何とかしてランディングページに誘導してメールアドレスを登録させたとしても、売り込みのメールばかりが届くと登録者は嫌気が差して登録を解除してしまうこともある。そうなると、折角集めたリストが目減りしてしまい、アフィリエイト収入の減少に直結してしまう。
 SNSでは一旦認めた友達関係の解除を躊躇う人が多いのを逆手にとって、とにかくお友達になって継続的に売り込める相手を確保すれば、少なくともランディングページによる登録のリストよりは目減りする確率が低い。要するにSNSを使ってお友達、即ち見込客リストを作れば少なくともお金はかからない、ということである。だから、唐突なお友達の申請は「何かしら下心があっての事」とも考えられるのだ。
 ひょっとしたら、深く考えずにいきなりお友達申請する場合もあるのかも知れないが、元々申請する側が深く考えていないのだから申請を受ける側も深く考えずに拒否すれば良さそうだ。

 どんな分野でも、大抵は少数の先発組が利益の大半を確保してしまい、大多数の後発組は少ない利益を大勢で奪い合うという構図になって安定状態に達する。しかし、塾や教材販売などアフィリエイトを売り込む側は口を揃えて「そんなことはない」と大きく喧伝している。
 その言い分は、「先行している我々が既にリストをガッチリ掴んでいて後から始めた人達が入り込む余地が無いと言うが、それは違う。潜在的な顧客となるインタネット利用者はこれからも増加の一途で減ることは無い。提供する方法を忠実に且つ懸命にやれば、必ず収入に繋がる」というものである。一見正しそうに見えるが、実際にはかなり怪しい。

 まず、日本は人口が減少傾向で、特に若い世代の減少が顕著となっている。「少子化」というキーワードで国を挙げて騒ぎ立てているのがその証拠ではないだろうか。今はネットを使っていない学童も大人になれば使うようになるだろうが、だからといって現在のインタネット利用者数を保てるほどの人口が今度も継続して存在するとは思えない。しかも、裕福な高齢者はいずれ死に絶えて行くし、ワーキングプアなどで収入が少ない若年層の大幅な増加が社会的な問題となりつつある。海外のネット利用者がわざわざ読めない日本語のサイトへ来るとは考え難いので、どう考えても「減ることは無い」とは言えないように感じるのだ。
 また、後発組が不利でないという説明にも不自然さを感じてしまう。何しろ、どのアフィリエイト関係の塾や教材でも登場人物はいつも同じなのだ。「まだアフィリエイト業界は歴史が浅くて範囲が狭く、先行した人はあちこちに引っ張り出されるので露出回数が多いように感じるだけ」と言い訳めいた説明がされているけれど、業界そのものが拡がらなければ現在の寡占状態に変化は無いということになるし、そもそも業界が今後拡大するという保証は何処にも無い。
 元手がかからず手軽に始められるという点では魅力的なビジネスではあるが、アフィリエイトという手法そのものが販売手数料のような寄生ビジネスで大きな利益を見込めず、稼ぐならライバルを蹴散らしながら時間と手間をかけてアクセスを増やさねばならないだろうから、決して楽な商売ではないようにも思えるのだ。

 また、アフィリエイト関係者は一旦リストに入った登録者が自らの意思で解除することを極端に嫌っているようだ。収入減に直結するから当然だろうが、余りにえげつないやり方ばかりなのはどうかと思う。
 拙者自身、一時期あちこちの無料情報提供サイトに登録していたことがあるが、配信されてくる無料の内容はネット上を検索すれば出てくるようなものばかりでメリットを殆ど感じず、数ヵ月後には登録を全て解除した。本来なら登録を解除したのだから、以後何も送られてくることは無い筈なのに、実際には1ヶ月から数ヶ月程度に1回の割合で勧誘(殆ど宣伝だけど)メールが届いている。
 それだけならまだ可愛いが、一登録を削除した後に見知らぬ相手から勧誘のメールが大量に届くようになったり、まぐまぐから突然AYUのメルマガに登録されたりしたのだから、たまったもんじゃない。恐らくリストを外部にも販売しているのであろう。ちなみに、AYUという人物はアフィリエイトで有名らしい。

 ネット上でこのような手法が出てきたのはAIDMA理論が輸入された頃からだったと思う。その後もAIDEES理論・AISAS理論・SIPS理論などが出てきてマーケティング論が賑やかになるに連れ、それらを取り入れた手法としてネット上のアフィリエイトも喧伝されたように感じる。
 ここで、大雑把に各理論を眺めてみよう。AIDMA理論は
1.Attention(注目・注意:例、「これって何?」)
 →2.Interest(関心・興味:例、「良さそうじゃん」)
  →3.Desire(欲求・購入希望:例、「これ、欲しいな」)
   →4.Memory(記憶:例、「見つけたら買おう」)
     →5.Action(購入・行動:例、「よーしっ、買ったぜ」)
と「購入」で完結するモデルである。大量生産時代の広告手法と言っても良いだろう。
 AIDEES理論は、
1.Attention(注目・注意:例、「これって何?」)
 →2.Interest(関心・興味:例、「良さそうじゃん」)
  →3.Desire(欲求:例、「これ、欲しいな」)
   →4.Experience(購入・体験:例、「よーしっ、買ったぜ」)
    →5.Enthusiasm(顧客の心酔:例、「これ、すっげー良いじゃん!」)
     →6.Share(推奨・他者と情報共有:例、「これ、本当に良いんだよぉ」)
と、「購入」で完結しないのがAIDMA理論とは違う。「6.Share」は実際に会って話をしている相手から得られる口コミ情報とか、購入した商品の良さを自分のブログや口コミのサイトなどに書き込むといった、自分以外への人達に情報を積極的に提供して「推奨」することで他者にも波及させて循環させる、言い方を変えれば、他者に興味を持たせる動機付け作用も含めている。
 AISAS理論は、
1.Attention(注目・注意:例、「これって何?」)
 →2.Interest(関心・興味:例、「良さそうじゃん」)
  →3.Search(検索・研究・調査:例、「本当に良いのか調べてみよう」)
   →4.Action(購入・行動:例、「よーしっ、買ったぜ」)
    →5.Share(推奨・他者と情報共有:例、「ほら、本当に良かったよねー」)
と、AIDEES理論の行動面を分析し直した内容になっている。インタネットが情報媒体として日常的に使われていることを踏まえて、「3.Search」が入っているのが今風である。
 SIPS理論は、
1.Sympathize(共感:例、「おっ!良さそうじゃん」)
 →2.Identify(確認:例、「調べたら、やっぱ良さそうだ」)
  →3.Participate(参加・購入:例、「良さそうだから買っちゃったよ」)
   →4.Share & Spread 共有と拡散:例、「ね、優れモンでしょ?」)
という流れである。AISAS理論とほぼ同じだが、切り口が少し違っている所がミソのようだ。

 国内はデフレという過去に経験したことの無い状況に政府も日銀も右往左往、国民の平均所得も減り続け、モノが売れない状態になってきている。それでも何とかして売り込もうと色々なマーケティング理論が出てきて、市場調査なんぞも色々な業界で行われているらしい。
 しかし、その一方で、どのメーカも似たようなものばかり、これといって欲しくなるようなものが無いように感じることが多くなった。それに同期して「マーケティングすれば当然その結果はある範囲に収まるから、それに向けた商品を開発すれば似通うのは当然」という言論をあちこちで見かけるようになった。
 しかし、本当にそうなのか?その辺に現在の停滞の理由があるのではないだろうか。
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たくや

私もたまに来ますが、どう見ても怪しいので無視していますよ。
by たくや (2013-01-07 22:36) 

くーぺ

ネット社会はどこまで、そしてどこに向かうのでしょうかねぇ・・・
ご挨拶が遅くなりました。 本年もよろしくお願い申し上げます。
寒い毎日、大事無くお過ごしください☆
by くーぺ (2013-01-07 23:19) 

Rifle

たくや さま
なるほど、無視するというのも良い手ですね。

くーぺ さま
ネット上もいずれはリアルの延長になるだろうとは思いますが、今は過渡期でしょうから、当分は色々なことが起きるかも知れませんねー...こちらこそ、本年も宜しゅうお願い申し上げまする。m(_ _)m
by Rifle (2013-01-08 15:13) 

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