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トランジスタhfeチェッカーの製作 [電子回路]

 千円でお釣りが2百円ほど帰ってきた中華製デジタルテスターにトランジスタ(Tr)の直流電流増幅率(hFE)を測定する機能が付いていたが、今ではほぼ使い物にならない状態となっている。
中国製の粗悪なデジタルテスター
具体的には、測定用の端子の接触が悪いらしくて、上手く測定出来ない事が多いのだ。分解して調べたが、測定用端子は樹脂で一体形成の部品で、内部の接点は奥深くに埋もれていてどうしようもない。

 1年半ほど前に書いた「TrのhFEと回路設計」の記事の中で、hFEは「想定する電流を実際に流して測る方が良い」と書いた。まぁその通りなんだけど、「一寸知りたい程度なのに、わざわざ測定用の回路を組んで測るというのもなぁ」と感じる時も結構ある。そこで、月刊誌「ラジオの製作」(1999年で事実上廃刊になった)に載っていた「hfeチェッカー」を作成することにした。
トランジスターhfeチェック回路
この回路図は、手元に保存してあるメモ用紙の中にあったもので、使い方や注釈などの記述が一切無い。おそらくは中学か高校の頃に自分で写したのだろうが、どうして元の記事を保存しなかったのか自分でも分らない。
 ブレッドボード上に組んで動かしてみるとちゃんと動くので、余っていたユニバーサル基板を使って組んだ。
hfeチェッカーの基板
実際に動かしながら、回路の動きを追う。まず、74HC04の8番ピンの出力をオシロスコープで見る。
hfeチェッカーの発振回路の出力波形
ピークtoピークで5Vの矩形波(方形波)で、サンワのデジタルテスターで測ったら周波数は446.6Hzと出た。オシロスコープ上の波形とも勿論一致している。
 8番ピンの出力を抵抗で減衰させてからTrのベースに加えている。減衰させる割合は12接点のロータリーSWで変えられる。コレクタにも同じ出力を加え、エミッタへは反転させた波形を加えている。これは、エミッタを接地(電位0)させる為だろう。矩形波を使うことで、極性が反対となるPNPとNPNのどちらのTrでも使えるようになっている。
 74HCU04というロジックICを使っているので電源電圧は5Vになっているけれど、これはTrのエミッタ・ベース間の最大耐圧が5VというTrが多いという事も考慮されているのかも知れない。

 この回路の動作を、順を追って考えてみよう。初期状態ではロータリーSWは抵抗値が一番少ない位置とする。この時、調べようとするTrのベースに一番大きな電流が流れ、SWを切り替える度にその電流が少なくなる。
 Trの動作は、通常はベースに電流を流す(ベース電流)とコレクタ・エミッタ間にhfe倍の電流が流れるが、ベース電流が必要以上に大きいとhfe倍にはならずにコレクタ・エミッタ間がスイッチのような状態になる。例えば、実際のhfeが100なのに、ロータリーSWをhfe=20の位置にすると、ベース電流が必要以上に大きい状態になり、コレクタ・エミッタ間はショートさせたような状態になる。この現象を使ってhfeを測定するという具合になっているようだ。

 NPN型Trで考えてみよう。
 まず、調べようとするTrでベース電流が大き過ぎる場合、8番ピンからコレクタに流れる電流はそのままエミッタへと流れ、OFFになっている6番ピンへと流れ込む。すると1番ピンには電圧が殆ど掛からないからOFFとなり2番ピンの出力はON。この時4番ピンはOFFだから2番ピンと4番ピンの間には電源電圧の5V近くの差があるので、電流が2番ピンから4番ピンへと流れてLEDが点く。
 hfe値とベース電流が釣り合っている場合、Trは通常の動作となるので、ベース電流に比例した電流がコレクタ・エミッタ間に流れる。この時コレクタ・エミッタ間の電圧はゼロ近くにはならないので、1番ピンに加わる電圧が必ずしもOFFでなくなる。74HCU04のデータシートでは、電源が4.5Vの時に3.6 V以上でONとなるので、その電圧に達すると2番ピンはOFFとなる。この時4番ピンもOFFなので、電流は流れずLEDは点かない。
 要するに、ロータリーSWを回してLEDが消えた時のhfeがそのTrのhfeとなる。

 言葉だけでは判り難い(自分でも良く分からん...^^;)ので、タイミングのポンチ絵を書いてみた。
LED出力のポンチ絵
二重線がONとOFFの中間の電圧もあり得るところで、赤線がLEDのON・OFFを決めている。自分で作っておきながらも、まだ解かったよーな解らないよーな感じに陥っているが、これ以上深く追求すると収拾がつかなくなりそうなので、この辺で止めておく。(笑)

 手持ちのトランジスタ2SA1112と2SD638で動かしてみると、それぞれ点くLEDが黄色と赤になる。
NPNの時
PNPの時
これで大まかなhfeは直ぐに測定できるようになったので、わざわざ測定回路を都度作る必要は無くなった。問題はどういうケースに入れるか、だな...
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