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またヘッドフォンのプラグを修理 [電子回路]

 少し前にPhilips(フィリップス)ノイズキャンセリングヘッドフォン SBC HN110のプラグを修理したばかりだが、その記事を見たXさんから「SENNHEISER(ゼンハイザー)HD238を修理できないでしょうか?」というお問い合わせを戴いた。なんでも、落とした衝撃が原因でモノラルでしか聞こえなくなってしまったそう。「だったら簡単に直るのでは?」と思い、早速そのヘッドフォンを自宅へと送って戴いた。
 ちなみに、Xさんとはカメラ関係の知り合いで、お隣の県にお住まいである。
届いたゼンハイザーHD238
届いたヘッドフォンは一見問題無さそうに見えるが、良く見るとプラグが少し曲がっている。
曲がってしまったHD238のプラグ部分
実際に音を出してみると、やはりモノラルでしか聞こえない。プラグ内部で右と左の配線がショートしているらしい。そんな状態なので、中音域を削ったようなヘンテコリンな音になっている。
 早速プラグを分解する。まずは外側のカバーを切り離す。
HD238のプラグ部
どうやら配線をハンダ付けしてから樹脂を充填して固めてあるらしく、しかも樹脂がかなり固いので1時間ほど格闘しても、ようやく配線が見える程度にしかならない。
HD238のプラグ部を分解
固い樹脂だけに落とした時の衝撃を吸収し切れず配線に直接伝わってしまい、結果としてショートしてしまったのでは?と考えられる。
 まず、使えないプラグの部分を切り落とす。かなり細い線が使われている。
HD238のケーブル
芯を傷つけぬよう、注意深く一番外側のゴム状の被覆を剥く。
HD238のケーブルの芯・処理前
細い繊維は補強用らしいが、ハンダ付けの邪魔になるので切り取る。
HD238のケーブルの芯・処理後
この手の製品は、大半が赤は「右」、無着色や黒は「アース」なので、青は「左」の筈。念の為にラジオを使って確認したら、やっぱりその通りだった。良く見ると、どの線も単に着色しただけでは無さそうだ。
HD238のケーブル芯を拡大
この画像だと拡大率が未だ低くて判り難いけれど、芯に使われている極細の銅線一本一本に樹脂がコーティングしてあり、赤や青は樹脂に着色してある。かなり手の込んだ線を使っているが、これは銅線が酸化するのを防ぐ為だろう。
 非常に薄いコーティングで手で剥がすのは無理[ふらふら]なので、ライターの火で炙って樹脂を焼き切る。この時、長時間火に当てると銅線も酸化して切れてしまうので、必要最小限に留めなければならない。今回は0.5秒弱焼いただけに留めた。
HD238のケーブル芯・焼却処理後
手元にあったマニキュア除光液(容器を見たら、主成分はベンジンだった)で樹脂の燃えカスを拭き取り、綺麗になった銅線を更に紙ヤスリで磨いておく。
 ヘッドフォンに同封されていた修理用プラグは2種類。
ステレオミニプラグ2種
下はCANARE(カナレ)のF12で業務用では良く見かけるが、上の方は初めて見た。メーカ名が入っていないので詳細は判らないものの、実にしっかりした造りだから高価な製品と思われる。流石、安易な妥協はしないXさんらしい堅実な選択である。
 ケーブルが細いので、今回は小さなプラグを使い、ハンダ付けする。
HD238のケーブルをプラグにハンダ付けする
ケーブルをプラグの金具にカシメてあるのでこのままでも実用上は問題無いけれど、念の為にグルーで固めて多少の衝撃には耐えられるようにする。
ケーブルをグルーで保護する
余分なグルーを切り落として形を整える。この時、キツくても緩くても駄目で、プラグのカバーをねじ込む時にやや抵抗がある程度となるようにカッターで整形する。
グルーをカッターで削って整形する
線を捻ってしまわないよう慎重にカバーをねじ込んで完成である。
修理し終えたHD238のプラグ
グルーがケーブルを覆っているので、多少の衝撃には耐えられると思う。
修理が完成したHD238
プラグカバーが金属なので、修理前よりも立派に見えるような気がする。(笑)

 折角の機会なので、自宅にある3種類のヘッドフォンと聞き比べた。
聞き比べたヘッドフォン4種
我が家の基準となっている beyerdynamic(ベイヤーダイナミック)のDT770MとHD238を比べると、低音の音圧感はHD238の方に軍配が上がる。60Hz辺りから下が特に充実している。DT770Mは密閉型故に低音が抑制されてしまうようだ。しかし、3kHz前後から6kHz辺りでライド・シンバルのビング音とクラッシュ・シンバルが重なった時はDT770Mが明確に分離しているのに対し、HD238はやや渾然とした感じになる。D770Mがモニター然としているのに対し、HD238は「音楽を楽しむ」為という、設計の違いが音になっているようだ。

 PhilipsのSBC HN110もHD238とほぼ同じ傾向だが、HD238に比べると低音域の音圧感は少なく、ハイハットやライド・シンバルのカップ音は大人しい。BOSEよりも低域は充実しているが、音に潤いが感じられず、ややパサついているように聞こえる。やや旧いヘッドフォンなので、この程度の差はあって当然だろう。

 BOSE(ボーズ)のOn-Ear(TriPort OE)は米国製だからなのか、他の3つと比べてかなり賑やか。600Hz前後から2kHz辺りにかけての音圧が他の帯域よりも強く感じられ、低音域が弱く感じられる。いかにも「アメリカン」な音(ん?)という感じがする。
 改めて聞き比べると、BOSEが最も見劣りする音になってしまうが、かなり旧いヘッドフォンなので仕方ないだろう。それにしても大きな差で少々驚いた。

 いつも「こんなもんでしょ」とヘッドフォンを使っていたので何とも思わなかったが、HD238と聞き比べるとやはり新しい製品は色々と改良されていると感じる。うーん、このHD238良いねぇ...我が家のヘッドフォンもそろそろ更新しようかなー?
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コメント 4

修理依頼者X

昨日から時間があれば 治して頂いたHD238で聴いています。こんなに低域が出ていたのかと思う程ボコボコ鳴りますね。プラグのせいでしょうか?。ケーブルは購入当時かなり細いものだったので心配していましたが、それなりに手を入れて作られているのがよく分かりました。Rifle様にも認めて頂けたのなら、予備にもう一つネットで探してみる価値はありそうですね。ご多用の中、早急に修理して頂いて本当にありがとうございました。

by 修理依頼者X (2013-05-22 09:57) 

Rifle

修理依頼者X さん

低音の出方はプラグではなく、ヘッドフォンの設計によるものです。配線の樹脂コーティングや接点を樹脂で固定するなど、かなり凝った造りですね。今回の修理のお陰でとても勉強になりました。
by Rifle (2013-05-22 16:25) 

しのみや

2013年5月20日の記事を見ました!
実は私、父の高いイヤホンのプラグを曲げてしまって、どうしたらいいのかわからないです!
何とか治す方法ありますか?
by しのみや (2018-01-03 00:01) 

Rifle

しのみやさん
出る音に問題が無ければ、傷を付けぬようプラグに布などを巻いた上でペンチで挟んでゆっくり元に戻せば恐らく大丈夫です。
この修理記事のように音がおかしくなっている場合は、プラグの部分を取り換える必要があるかも知れないです。交換作業は難しくないのですが、自信が無ければお店に修理を依頼しても良いでしょうね。
by Rifle (2018-01-03 06:35) 

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