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DJミキサーSTANTON M201の修理 [電子回路]

 子供が使っているSTANTONのDJミキサーM.201が「調子が悪い」という。
STANTONのDJミキサーM.201
具体的にはチャンネルフェーダーのガリだが、それ以外にも「高音が何となく弱い」のだそう。
 この手の製品はスライダーボリウムに専用部品が使われていることが多く、部品店では手に入らないことが多い。比較的新しい製品なので、部品劣化はそんなに進んでいないと考えられる。ボリウム内部の摺動面を奇麗にすれば動くことが多いので、まずは分解してみることに。

 まず本体上面のツマミは全て外し、本体底面を見ると外周に沿って筐体を固定しているネジがある。
STANTONのDJミキサーM.201の裏側
ネジを外すと黒い裏蓋が外れて基板が見えてくる。
STANTONのDJミキサーM.201の内部基板
DJミキサーだから耐震を考慮したのか、この基板は26個の木ネジで固定されていて、外すのがちょっと大変だ。ネジを外すと、筐体上側から基板が外れる。
STANTONのDJミキサーM.201の基板を外したところ
配線は繋がった状態でも作業に支障はないので、外さずそのままにしておく。基板上面を見ると、問題のスライダーボリウム(銀色の細長いボックス状の3つの部品)が見える。
STANTONのDJミキサーM.201の基板の部品面
部品を見ると、電解コンデンサには105度のものが使われており、回転型ボリウムも全て密閉型になっている。一般的な電化製品よりも環境の悪い場所で使われることを想定しているのかも知れない。
 但し、単純に「105度対応の部品が使われているから85度対応よりも寿命が長い」という訳ではない。そのような記述をしているサイトも多いけれど、実際には回路の特性や使われる環境に大きく左右される。それに、電解コンデンサはその構造上の問題から部品寿命が有限であり、長期に渡る使用では部品交換は避けられないのであーる。
# だから「古いから、とりあえずケミコンだけは交換しとこ」なんて拙者のような人も多い訳で。
 基板のハンダ面を見ると、一部手作業でハンダ付けしたような痕が複数ある。
ハンダ面には手作業のような痕のある部分もある
部品によっては手作業でハンダ付けされているのかも知れない。

 慎重にハンダを溶かしてスライドボリウムを3つ共外す。
STANTONのDJミキサーM.201で使われているスライドボリウム
全て2連になっていて、抵抗値は一般的な値のものが使われている。
STANTONのDJミキサーM.201に使われているスライドボリウム
ボリウム上面を見ると、妙に脂ぎっている。
ボリウム上面はグリスまみれ
グリスが溶け出しているようだ。基板上ではボリウムの周囲にはグリスらしきものは全くないので、ボリウム内部から染み出たようだ。「どうして内部にグリスが?」と思ったが、案外スライド時の抵抗を無くすためにスライド側面に塗ってあったのかも。
 全体の油分を拭き取ってからボリウムの分解に取り掛かる。まずは金属ケースのツメを起こす。
スライドボリウムの金属ケースのツメを起こしたところ
ゆっくり基板を外すと分解できる。
スライドボリウムを分解したところ
抵抗体の摺動面(黒い部分)にはグリスが全体的に広がっており、配線部分(真ん中の銀色の部分)にも広がっている。電流の流れる部分にグリスがあると抵抗分になってしまうので、エレクトロニッククリーナーで洗浄する。
ボリウムの抵抗体をエレクトロニッククリーナーで洗浄したところ
更に、配線部分はNeverDull(ネバーダル;金属磨き)で磨き上げる。
ボリウムの内部配線をネバーダルで磨いたところ
スライド本体もグリスまみれになっていて、一部緑青が出ている。
グリスまみれになっているボリウムのスライド本体
ばらしてみると、内部までグリスが回り込んでいた。
スライド本体全体にグリスが回り込んでいる
こちらも同様にクリーナーで洗浄する。
スライド本体の部品をクリーナーで洗浄したところ
スライド本体の底面に付いている接点は摺動面と直接触れる部分が劣化している。
スライドの接点も劣化していた
こちらもクリーナーで洗浄してからNeverDullで磨き上げる。
 ボリウムの金属カバー内部を見ると、やはりグリスが入っていた。
スライドボリウムの金属カバー内部にはグリスが残っている
この状態からすると、製造時にグリスを入れていたと考えられる。スライド本体の側面と上面に当たる部分の量が多いので、やはりスライドさせた時の摩擦低減のためのようだ。こちらもクリーナーで洗浄する。
スライドボリウムの金属カバー内部を洗浄したところ
全部奇麗になったら元通りに組み立てる。
内部全てを洗浄して組み立てるところ
グリスは無くても動作は軽くてスムーズだ。グリスを入れる必要は無さそうなので、もう一つも同じ作業を繰り返しす。

 小さい方のスライドボリウムにはセンタークリックがある。ということは、小さなボールか何かでクリック感を出している筈なので、分解する際には小さな部品を見落とさないように注意が必要となる。
クリック付きのボリウムは小さな部品を紛失しないよう慎重に分解する
スライド本体側面に、案の定小さな金属ボールが入っていた。
スライド本体側面に入っていた小さな金属ボール
取り出してみると、ボールのサイズは1mm、抑えのバネは3mmしかない。
金属ボールは1mm、バネは3mmという小型サイズ
どちらもグリスまみれなので、紛失しないように注意しながらクリーナーで洗浄する。
 抵抗体の摺動面は一見何も付いてないように見えた。しかし、指で触ると油分が付いたのでクリーナーで洗浄し、配線部分をNeverDullで磨き上げる。
ボリウム内部の電気が流れる部分を洗浄して磨く
スライド本体に油分は殆ど無かったが念のために洗浄し、金属ケースの内部も奇麗にしてから組み立てる。小さなバネとボールを押し込んでケースに入れなければならないので、とても気を遣う。
組み立てる際には小さなボールとバネを忘れずに
実は、組み立てている最中に、開けてあった窓から強い風が吹き込んでボールがどこかへ転がって行ってしまい、3時間ほど部屋の床を這い蹲って探し回ったのは、ここだけのヒ・ミ・ツ。(笑)
 全てのボリウムを組み立てたら元通りに組み立てて完成、作業完了である。
修理が終わったSTANTONのDJミキサーM.201
いつもの環境で子供に使って貰ったら「ガリは無くなって、高音の弱さも無くなった」と。修理前はスライドボリウムの部分で高音成分を減衰させていたようだ。これでメデタシメデタシである。

 ちなみに、子供はDJをやる為にこれを購入した訳ではなく、CDJプレーヤーを購入した際に一緒に付属してきた物だ。CDJプレーヤーは頭出しが簡単なので、子供は好んで使っている。曲の練習などにはとても都合が良いのだそうな。拙者の頃はカセットテープに録音してそれを何度も再生・巻き戻しを繰り返したもんだが、今の時代は便利になったねぇ。
 このDJミキサーにはPhono入力が各チャンネルに備わっている。
STANTONのDJミキサーM.201の端子面
MMカートリッジのみ対応だが、アナログ盤DJでMCタイプのカートリッジを使うとは思えないので、現実的な設計だと思う。
 そういえば、自宅のオーディオにはアナログプレーヤーがあるけれど、Phonoイコライザーが無くて使えない状態になっている。必要になったら、これを借りれば済むネ。(笑)
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Take-Zee

こんにちは!
足腰痛し、歯も抜かれ・・・
だいぶ痛んだ私の身体、一度オーバーホールして
もらおうかな?
 何でも直す記事を拝見していると、そんなこと思います。

by Take-Zee (2016-09-12 13:47) 

Rifle

Take-Zeeさん
年齢が上がってくると色々と出てきますよね。
国内の医療は投薬中心になっちゃってて、生活指導で治せるのに薬を飲むのが当たり前なんていう恐ろしい状態になっているように感じます。
事故からもうすぐ半年になりますが、拙者も右手は今も重いものが持てません。これ以上故障しないように気を付けています。
by Rifle (2016-09-12 17:54) 

ブルル

クリーニングは修理の基本ですね!
しかし細かい作業ですなぁ(笑)
by ブルル (2016-09-13 11:48) 

Rifle

ブルルさん
最近は細かい作業になると、メガネを外さないと見難くなりました。
人間の方もオーバーホールしたいですねぇ。(笑)
by Rifle (2016-09-13 18:00) 

MINERVA

ボリウム系はグリスが塗布されている場合が殆どですので、清掃だけで復活する事が多いですね。
しかしながら、これだけの細かい作業、お疲れ様でした。
by MINERVA (2016-09-13 19:30) 

Rifle

MINERVAさん
やっぱりグリスは付き物なんですねー。
コストの問題でしょうけど、耐久性の事も考えて欲しいなぁ。
チマチマした作業で一寸くたびれますが、直るとやっぱり嬉しいです。(笑)
by Rifle (2016-09-13 20:37) 

tama

接点グリースのようなものなんでしょうか。素人考えだと、最初からグリースを塗っていたほうが、接触不良などのトラブルは避けられると思うのですが。
トライアンフのヘッドライトスイッチを分解していてボールを飛ばし、とうとう見つからずにスイッチごと買い替えたことがあります。ボールの大きさは2~3ミリあったのですが、バイクショップの床に転がって行方不明になりました。
by tama (2016-09-14 00:52) 

Rifle

tamaさん
バッテリー端子には腐食防止の為に薄くグリスを塗ったりしますけど、ボリウムの摺動面に油分があると接点間に油分が入り込んで導通面積が減ってしまい、電気的特性に影響が出るのは避けられないと思います。
スイッチに入ってるボールって小さいですから、分解時は磁石付き部品皿の上で作業すれば安心です。拙者もそれに気が付いたのはボールを転がした後でしたけど。(笑)
by Rifle (2016-09-14 06:57) 

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