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グヤトーンGA-7のレストア作業(その2) [電子回路]

前回からの続き)

 入出力のジャックは全て6.3mmΦ標準が使われているけれど、どれも接点が酸化している。
ジャックの接点が酸化している
この程度なら実用上は問題無いが、バラした序にNeverDullで磨く。
ジャックの接点をNeverDull(ネバーダル)で磨いたところ
チップ部が酸化しているのなら、スリーブ側も当然同じ状態だ。
ジャックのグラウンド側も参加している
こちらも同様に磨く。
グラウンド側も磨いたところ
一通り作業し終えたら、次は基板の配線を追って配線図を作成する。通常のレストア作業ならそこまでする必要は無いとは思うが、このGA-7は修理されたらしいので、どの部分を修理したのかを追跡するには回路図があった方が何かと便利だからだ。

 まず、基板をデジカメと平行になるように置いて、画素数を多くした状態でデジカメで撮影する。
基板のハンダ面を撮影する
撮影した画像のままでは容量が大きくて扱い難いので、色数を減らして加工し易くする。
基板画像の色数を減らして容量を減らす
色数を減らすと近似色に変換される部分も多くなるので、必ずしも輪郭のみが取り出せるとは限らない。基盤そのものは茶色なのだが、この画像も光の当たり具合で違う色で近似された部分が多く出た。お絵かきツールでちょこまか修正して、大雑把にはそこそこ奇麗になった。
減色による近似色を修正したところ
# 後になって考えればGIMPとかで予め色合わせした上で減色すればもっと簡単に出来たのかも...
これをグレースケールに変換し、配線で隠れていた部分は手書きで修正、更に細かな修正を加えれば基板の配線パターン図は完成である。この作業だけで丸一日掛かってしまった。(汗)
モノクロ化して完成した基板の配線パターン図
これをプリンタで打ち出し、基板を見て部品の内容を書き込む。この作業もほぼ丸一日掛かった。
基板配線パターン図に部品の情報を書き込んだところ
これを基に手書きで回路図を起こす。
完成した手書きの回路図
逆フローなのでおかしな部分はあるものの、とりあえずは必要な物が出来上がった。

 回路図を基に改めて基板を見直す。基板上の部品は、機能で分けると大体こんな風になっている。
基板の配線パターン図を機能別に分類したところ
水色はグラウンド・レベル、ピンクは電源ラインである。
 LINE入力は2SC1685のバッファ回路で受けて、イコライザーを通らずトーンコントロール回路に直接繋がる。
 INPUT(ギター・ベース・キーボード)入力はHIGHとLOWに分かれているけれど、内部では単に信号を受ける部分の抵抗値が違うだけで、2SK30Aと2SC1685のバッファ回路で受けている。この回路から機器別イコライザー回路へと繋がる。
 機器別イコライザー回路は6552オペアンプ2個で構成されていて、スイッチで回路を使い分ける。キーボードはイコライザー回路を通さずにトーンコントロール回路へと繋がる。ギターとベースはそれぞれイコライザー回路を通ってからトーンコントロール回路に繋がる。
 トーンコントロール回路で高音域(TREBLE)と低音域(BASS)を増減してパワーアンプ回路へと信号を流す。この部分はパッシブ(受動回路)で、オペアンプ等の増幅素子は使われていない。
 パワーアンプ回路はLA4660一つだけで賄っている。データシートを見ると、電源13.2V(自動車のバッテリー電源)の時に12Wの出力がある。練習用アンプとしては十分だ。

 改めて部品面を見ると、タンタルコンデンサが機器別イコライザー回路で2か所使われている。
使われているタンタルコンデンサ
部品の表記が現在の物と違う。そのサイズから、恐らくは「V68」が0.68μF、「V15」は0.15μFと思われる。この容量なら安いマイラーコンデンサを使いそうなもんだが、このコンデンサの周囲は抵抗とマイラーコンデンサが密集しているので、マイラーコンデンサでは場所が足りなかったのかも知れない。
# 昭和の頃はマイラーコンデンサって結構大きかったんだよね。

 ハンダ面を見ると、パワーアンプ部にハンダ付けをやり直したような形跡がある。
パワーアンプ部ははんだ付けをやり直した跡がある
この時代ならハンダ浴で基板全体を一度にハンダ付けしている筈。しかし、電源平滑用コンデンサのリード線は再度ハンダを溶かした形跡がある(線で囲んだ部分)ので、取り換えられているようだ。
部品を付け直したらしきハンダの跡
LA4460もハンダをやり直した跡(線で囲んだ部分)がある。
LA4660も再ハンダされているらしい
ということは、修理では何らかの原因で飛ばしてしまったパワーアンプの部品を交換したのではないだろうか。
 他には再ハンダらしき跡が無いので、イコライザーやトーンは出荷時のままだと思われる。

 これで調査は一通り終わった。次は劣化しているであろう電解コンデンサの交換に取り掛かりたいのだが、生憎同じ容量が手持ちの中には無い。大須・アメ横辺りに行って調達してこなきゃね。

(続く)
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コメント 4

tama

いやぁ~すごい。気の遠くなるような作業ですね。
当然、あたしにはチンプンカンプンですが・・・。(^^;
これだけの知識をお持ちなら、いろんな機器も自作できて楽しいだろうなぁと、お気楽に想像しています。
by tama (2016-09-18 13:13) 

Rifle

tamaさん
今回は基板が掌サイズでしたから、まぁ大した事は無いです。
一応電子工学科卒なので卒業直後は出来たんですが、今は・・・。(汗)
「こんなんじゃマズイよな」と思い、改めてトランジスタ回路設計の本を読み直してます。(笑)
by Rifle (2016-09-18 17:21) 

MINERVA

回路図を起こすとは、徹底されており凄いと思いました。
元々が出力される音へのこだわりがありますので、同じ定格の物で揃え回路もチキンとしたいですよね。
大変だと思いますが、とっても楽しいと感じております。
頑張って下さい!!

by MINERVA (2016-09-18 18:33) 

Rifle

MINERVAさん
お心遣い有難う御座います。
メーカ(東京サウンド)は既に無いので、頼れないのが痛いところです。
エレキ関係は出た音が全てですから変なところで妥協したくないし、今後も自分でメンテナンスしていくので、せめて回路図程度は無いと困るだろうと考えて作成しました。
回路を見ると、当時の技術者の苦悩が見えるようでなかなか感慨深いです。
by Rifle (2016-09-18 20:37) 

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