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改めて、ローライコード3型 [カメラ]

 何となく機会が無くて今まで記事にしてこなかったけれど、昨年3月に整備済みのローライの中判二眼レフ・Rolleicord(ローライコード)3型を手に入れた。
ローライコード3型
有名なRolleiclub.comの分類に依れば、このカメラはシリアル番号から「Model K3B」となる筈なのだが、何故かテイクレンズ(下側のレンズ)がSchneider社の「Xenar (クセナー)3,5/75mm」ではなく、Zeissの「Triotar(トリオター) 3,5/75mm」になっている。当時が幾ら手作業の組み立てだからと言っても、製造の過程で一部だけレンズを替えるのは非常に考え難い。恐らくは光学系の故障等、何らかの事情でレンズが入れ替えられたと思われる。

 まず、カメラ全体を見てみよう。前面にはシルバーのプレートがあり、全体の印象を引き締めている。
IMG_3495.jpg
銘板には機種名「Rolleicord」、「DRP」は「Deutsches Reiches Patent(ドイツ国家特許)」、「DRGM」は、「Deutsches Reiches Gebrauchsmuster(商標登録)」の略、中央の数字がシリアル番号だ。
前面の銘板
この番号から戦前の1950年製造と判る。因みに、戦後のモデルは「DBP/DBGM」という表記になる。これは「R(Reiches:国家)」が「B(Bundes:連邦)」に変わるからだ。
 テイクレンズ(フィルムの撮影に使うレンズ)はCarl Zeiss(カールツァイス)のTriotar75mm/F3.5だ。
テイクレンズはトリオター75mm/F3.5
当時すでにコーティング技術が普及しており、このレンズも単層コーティングが施されている。「T」の文字がその証だ。なお、ツァイスはその後多層膜コーティングを開発、そのコーティングが施されたレンズには「T*」のマークが入っている。
 右側面には、ピント調整ノブ(中央)とフィルム巻き上げダイアル(左上)がある。
ローライコード3型の右側面
左側面は、フィルム巻き上げスプールノブ(上)とフィルムスプールノブ(下)があるだけだ。
ローライコード3型の右側面
背面は、EVテーブル(露出換算表)のみで、操作に関する部分は何もない。
ローライコード3型の背面
「10° DIN」とあるので、この表は「ISO8」のフィルムを前提としている。
背面のEVテーブル
発売当時のフィルム感度はISO8が普通だったからだろう。
 底面は裏蓋オープンレバー(表面がツルツルの銀色の部分)と裏蓋ロックレバー(表面がギザギザの銀色の部分)がある。
ローライコード3型の底面
このモデルからフィルムをスタートマークに合わせて装填する方式となり、赤窓を見ながらフィルムを注意深く巻き上げるという面倒な操作は必要無くなった。言い換えれば、現在の中判カメラと同じ方式になった。

 一般的にはローライコードは4型以降がおススメと言われている。さまざまな改良が行われているから、というのがその理由だが、特に大きいと思われるのが「内面反射軽減の為の遮光用バッフルが取り付けられた」と言う点。実際にこの3型のフィルム室を見ると、艶消し塗装だけど面となる部分が多く、確かに反射が多そうに見える。
3型のフィルム室は反射が多そうな感じ
逆光・半逆光などでは写りに直接影響するので、他の改良点も併せてを考えると3型は少々立場が弱い。

 それでも、あえてRolleicordを探して購入したのは、「旅とカメラ」でも少し触れたように「Triotarの写りが好きだから」という単純な理由からだ。
# モノクロとカラーを同時に使うには2台必要という別の理由もあったりするけど。
解像度や写りの良さだけを考えれば、より新しい設計のレンズPlanarを搭載する2.8Fが良いのは間違いない。しかし、レンズの写り具合は解像度さえ上げれば良いという訳には行かず、ザイデル収差(歪曲収差、球面収差、コマ収差、非点収差、像面湾曲)や色収差(倍率色収差も含む)などの色々な要素に依ってフィルムへの写り具合が変わってくる。
 各種収差を軽減させる為にコーティングしたりレンズ枚数を増やしたりして対応させていて、その辺が各メーカの腕の見せ所でもある。
 しかし、例えレンズ1枚でも透過光の僅かな劣化は避けられない筈なので、構成レンズが3枚しかないTriotar(3群3枚)に惹かれるのである。
# 因みにローライのPlanarは4群5枚、Tessar(テッサー)は3群4枚です。

 実際に使ってみると、Rolleiflex2.8Fとあまり違いを感じない。勿論、2.8Fの方が何かにつけて改良されているので使い易いのは確かだが、だからと言ってRolleicord3型が取り立てて使い難いとは感じない。操作が多少違う程度で、慣れてしまえば問題とは感じない。
 ただ、フォーカシングスクリーンの見え具合には大きな差を感じる。具体的には2.8Fと比べるとかなり暗く感じるのである。
スクリーンの明るさはかなり違う
この画像はレンズの60cmほど前に白紙を立てた状態でスクリーンを見たもので、左の2.8Fは明るいのに比べ、右のRolleicord3は中心部は普通に見えるけれど周辺部が暗くて良く分からない。明るい場所なら撮影に支障は無いものの、少し暗い場所になると2.8Fでは問題無くてもRolleicord3でピント合わせするのはかなり難しい。

 せっかく手に入れても、使い難いとどうしても出番が減ってしまう。
 以前ならお金をかけてカメラ修理屋で改造して貰う以外に方法が無かったけれど、今はネットのお陰で自分で手直し出来るようになった。改良に必要な物は発注済みなので、届いたら早速作業を進めよう。
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コメント 11

middrinn

お使いになられなくても、飾っておくという手が(^_^;)
よく利用している喫茶店が、実際、飾ってます(〃'∇'〃)
by middrinn (2019-06-26 06:36) 

Rifle

middrinnさん
確かに飾っても絵になる(!)カメラですけど、狭い我が家では「飾る場所が無い!」という物理的制約があって(^^;)使わない物は置いとけないんです。(汗)
by Rifle (2019-06-26 09:22) 

みうさぎ

活躍の場を増やして
アートなブログにしてください~
博物館展示品にしても
良いくらい?では
ない?
撫でるように~使って下さいね~
(*^^)v
よしよし~
作業公開ネタが楽しみです~

by みうさぎ (2019-06-26 14:17) 

tama

「改良」はスクリーンの交換でしょうか?
今も持っているハッセルをアキュートマットにしたら、劇的に使いやすくなりました。ローライにもこの手のスクリーンがあるのかな?それともまた別の手段が・・・。
by tama (2019-06-27 08:53) 

Rifle

みうさぎさん
今時二眼レフは実用より鑑賞用がメインでしょうねー。
でも、拙者には実用品~。(笑)
ただ、古き機械には変わりないので、優しく使い続けます。(^^;)

tamaさん
その辺を今記事に書いてる最中です...。(^^;)
by Rifle (2019-06-27 12:15) 

ジャガジイ

初めまして、よろしくお願いいたします。
同じカメラを20年近く前にたくさん使ったものですから、さすが当時に考えていたことをほとんど網羅して書かれていたので、素晴らしいと思いました。わたしの機体は11741740ですから少し若いです。
当時夕方以降の撮影が好きで、Tmax400・TMY対応のため、フィルム室にはラシャ紙、mamiyaRzのスクリーンから切り出したスクリーンに変更しました。
戦後ドルの使えない日本で、少しでも安価な、性能の上がったトリオター付きは当時、敗戦国の日本が製造数のほとんど輸入していたようで、日本の中古店、オークションでは意外に容易に手に入りました。逆に諸外国ではわざわざトリオター付きを買う理由は少なく、手に入らないようでした。当時の新聞記者の追憶で、トリオターにはコーティングが付き、戦前のテッサー並みに撮れたという記を読みました。
現代のフィルムは、強い光に強いので、昔のレンズの性能がよく出て、素晴らしいですね。
by ジャガジイ (2022-01-21 10:08) 

Rifle

ジャガジイさん
こちらこそ、初めまして。(^^ )
2.8Fプラナーと撮り比べてみた事ありますけど、殆ど差が無いんです。古い設計のレンズですが、その実力は侮れません。
トリオター搭載のローライコード3は、国内ではあまり人気が無いみたいですが、ある意味お買い得だったりします。
by Rifle (2022-01-21 12:21) 

ジャガジイ

時々、ローライは旅行に連れ出します。トリオターのシャキッとした描写と背景のボケ味はとても好みに会います。もし機会がありましたら、2,8Aのテッサーf2.8付きもオススメです。やはり同じようにピントがあったところからアウトフォーカスまでのなだらかな描写は、わたしの下手な写真を少しはまともに見せてくれます。2.8Fよりもかなり軽く、シャッターボタンのタッチも絶妙です。薄暮の時間の素晴らしい写真が取りやすいです。
by ジャガジイ (2022-02-18 10:03) 

Rifle

ジャガジイさん
2.8AのTessarは色々言われていますが、どれも「Planar・Xenotarと比べて」の話みたいですね。
たまたま2.8Bを手に入れる機会があったので2.8Aは未経験ですが、いずれは手に入れてみたいと考えています。
by Rifle (2022-02-18 12:14) 

ジャガジイ

ローライフレックスの中では、プラナー・クセノタールの描写はテッサーより1色多く写るとは有名な話ですが、それはアンダー露出部分を持ち上げてくれる分の色乗りがよかったと考えています。逆にモノクロ写真では、2.8テッサーやトリオターは、その少しだけ黒が締まり、少しだけ白が美しく滲む絶妙さが見る側のイメージを膨らませてくれる写真が撮れて良いのかもしれません。ただ、ボディーの内面反射対策は必須だと思います。長話失礼しました。
by ジャガジイ (2022-02-19 20:39) 

Rifle

ジャガジイさん
テッサーはストンと落ちる分切れ味が良いという論調もありますね。
順光撮影が必然だったローライフレックスの初期モデルは植毛紙などでの対策が必要ですけど、ネットのお陰で入手は難しくないので、作業の手間程度で済むのが有難いです。
by Rifle (2022-02-20 14:02) 

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