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BOSS TM-7のオーバーホール [音楽]

 今年1月、BOSSのギターモニターTM-7を格安で入手した。
BOSS TM-7
格安の理由は「動作確認できる環境が無い為ジャンク扱い」だった。この手の製品は汎用品で作られている事が多いので「なーに、動かんかったら自分で直せばエエやん」と思ったのである。
 このTM-7は発売当時「カラオケ製作機」なんて言われていたりした。その理由は「センターキャンセル機能」があるから。ボーカルやリードギターは音の定位がセンターになっている事が殆どなので、そのセンターの音声成分だけを取り除けばカラオケみたいになる、という訳である。
 実際には、ギターであってもディレイやコーラスなどで左右に音を振り分けてある事もあったりするので、完全には消えない事もあるけれど、カラオケ気分で使う分には気にならない。
# この辺は、使う人によって感覚が違ってくるかも。
 ギターは本体右側面のジャックに、ヘッドフォンは左側面のジャックに接続して使うんだけど、上側面にはエフェクターへのセンド・リターン端子があり、しかもリターン側はステレオ対応、ライン入力も勿論ステレオ対応になっている。
上側面の入出力部
発売当時をリアルタイムで経験しているから「古い機材」という意識は全く無いのだけれど、1994年発売だから28年も前。
# 歳食ったなー(^^;)...(--;)
内部はそれなりに劣化している筈だから、他の機材修理の序でに必要な電解コンデンサ類を発注しておいた。

 部品が届いたら、オーバーホール作業を開始する。
 まず、ネジは上側面と底面にあるので、それを外す。
# 何故かBOSSのエフェクターFUZZのシールが貼ってあるね。
底面を見たところ
裏蓋を外すと基板が見える。
裏を外したところ
基板を外すと、操作面側にはアルミ箔のシールドがある。
基板を外したところ
ノイズ対策だろうが、随分と気を使った設計になっている。
 古い電解コンデンサは問答無用でオーディオ用汎用品に替えた。上に並べてあるのが外したコンデンサである。
電解コンデンサを交換したところ
オーディオ用は一般汎用品よりもサイズが大きい為、背の高い物は筐体に閊えないように横倒しにして取り付けた。
 次はボリューム類を外す。
ボリューム類を外したところ
基板取付用なので、軸の部分にネジは無い。まずは少し大きい青いボリュームの方から分解する。
青いボリューム
固定している爪を慎重に起こして分解すると、内部はグリスまみれになっていた。
分解したところ
特に抵抗体面が酷くて、全体にグリスがべっとりと付いた状態だ。
抵抗面にグリスが回ってしまっている
エレクトロニック・クリーナーとNevrDull(ネバーダル・金属磨き)で綺麗になった。
クリーニング後の状態
次は小さな黒のボリュームだ。
黒い小型ボリューム
こちらも分解すると、内部はグリスまみれだ。同じようにクリーニングする。
 ライン入力のRCAジャックは、メッキが部分的に劣化しててうっすらと白くなっている。
メッキの部分が劣化している
こちらもNevrDullで磨いてみたが、殆ど変化が無い。
磨いても変わらず
劣化がだいぶ進んでいるみたいだ。
筐体は、見た目は普通だし、ウェットティッシュで拭いても汚れは付かない。
一見綺麗そうに見えるが・・・
しかし、古歯ブラシと石鹸で洗ったらやや濃い茶色の泡が出た。前所有者は喫煙者だったようだ。
 洗ってサッパリ...と思ったが、アクリルパネルの傷が気になる。
パネルの傷が気になる
液体コンパウンドで磨いてみたら、浅い傷は綺麗に取れたが、やや深い傷は取り切れなかった。
大きな傷は液体コンパウンドでも取れない

 序に、使われている半導体部品を確認しておく。
 TC4013BPはフリップフロップ回路が2つ入ったデジタルIC。センターキャンセル回路で使われている。
TC4013BP
ギター入力からのプリアンプ回路全般に使われているのは三菱製のM5218AL(汎用ローノイズ)だ。
三菱M5218AL
なお、三菱はIC製造から撤退した為、後期の物はJRC製NJM4558LのOEMになっているそうな。
 同じく三菱のM5216L(汎用ローノイズ・大電流タイプ)は、センド・リターン回路に使われている。このICが使われているのはここだけ。
三菱M5216L
出力部があるから、設計者はラージ・カレント・タイプのオペアンプを選んだと考えられる。市販すると設計者の想定外の使われ方をする場合があるから、余裕を持たせているのだろう。けれど、仮に卓(ミキサー)送りにしたとしても、そんなに電流を流すん?という気もする。ICが違えば音も変わってくるので、サウンドの均質性という観点で見れば、内部と同じML5128ALを使う方が好ましいと思う。
 プリアンプ回路には2SK184GR(ローノイズ・オーディオ用)が使われている。
2SK184GR
ミュート回路には2SC3327A(ミューティングやスイッチング用)が使われている。
2SC3327A
2SA1048GR(低周波用大電流タイプ)もミュート回路で使われている。
2SA1048GR
2SA1335GR(低周波用ローノイズ)はプリアンプ回路で使われている。
2SA1335GR
2SC3378GR(ローインピーダンス・ローノイズ)もプリアンプ回路などで使われている。
2SC3378GR
2SC2458GR(ローノイズ低周波用大電流タイプ)は電流制御の回路で使われている。
2SC2458GR
使われている半導体を見ると、「ナルホドォ、設計者は適材適所で使い分けてるなー」と改めて感心した。

 組み立てる時「あ、表のパネルって組み立ててから貼ってる?」と気が付いた。
貼ってあるパネルを裏から見たところ
というのは、分解する時も組み立てる時も、ボリュームの軸が閊えてしまい、とてもやり難いのだ。
 こんな状態だと製造ラインで問題が起きるだろうから、分解時にも不思議に思ったのだが、後貼りなら全く問題無い。言い換えると、分解する前提では無いという事になる。ウーム...
 元通りに組み立てたら、作業は完了である。
オーバーホール作業完了
早速音を出してみる。
 作業前と比べて、高音域が良く出るようになった。音声ライン上にある電解コンデンサが新しくなったからだと思う。更なる高音質化を目指すなら、M5218ALを高音質タイプのオペアンプ(例えばOPA2134とかMUSE8820とか)に入れ替えれば音は良くなるだろうが、今のところそこまでやる積りは無い。
 ライン入力があるから、CD等とギター・ヘッドフォンを接続すれば一寸した練習なら直ぐ出来そうだし、
# 練習嫌いな拙者が言うのもナンですが。A(^^;)
軽いレコーディングならこれ一台で賄えそうな感じだ。

 これで普通に使える状態になった。目出度しメデタシ、である。
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みうさぎ

目出度し無事作業終えて良かった~
by みうさぎ (2022-04-20 15:13) 

Rifle

みうさぎさん
基板一枚だけなので、今回の作業はかなり簡単でした。(^^)v
by Rifle (2022-04-20 20:10) 

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