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Mackie HR824MK2の簡単な修理 [音楽]

 普段子供が使っている米MackieのパワードモニタースピーカHR824Mk2は「全体的に低音が弱い。特に左側の低音が少し弱い気がするのと、(背面にある)スイッチの接触が悪くて音が出ない時がある」と。
 拙者が音を聞いてみると、確かに左側が2dBほど低域が薄いように感じる。それに、何となく金物(かなもの:シンバル類の事)のキレ味も悪い感じ。「うーん...一度計測してみる方が良いかも。」BehringerのDEQ2496と測定用マイクECM8000を持ち込んで測定する。
DEQ2496とECM8000を設置したところ
DEQ2496からのピンクノイズをHR824Mk2に送って音を出してみると、確かに40Hz以下の低域が削れている。
低域が凹んでいる
RTA(リアルタイム・アナライザ)の表示は、中低音域から上はそこそこフラット。高音域の出力は問題無さそうだ。
# あくまでも測定上の話で、聴感による分析とは一致しないのが普通だよん。(笑)
「こりゃ、何かしら修理が必要だな。」
Mackie HR824Mk2
この製品に限らず、レコーディングスタジオ向け機材は楽器店ルートのみでの販売で、家電量販店には流通していない。ちなみに、入手したのはオークションである。
 修理に出すと時間が掛かる上に高額な費用を請求される危険性もあるので、自分で修理する事に。「んじゃ、一度中を見てチェックするわ。」左右共作業する部屋に引き上げて来た。

 裏を見るとネジが沢山ある。まず、上部のネジ3本を外す。
上側のネジを外す
すると、上の樹脂カバーが外せる。
樹脂カバーを外したところ
次に、四隅にある六角ボルトを外す。
六角ボルトを外す

六角ボルトを外す
すると、回路部が外せる。
回路部を外したところ
スピーカ側を見ると、ドローンコーンが見える。
背面にあるドローンコーン
タイラップで固定されている配線を外してスピーカから切り離す。
スピーカから分離したところ
基板上に多数あるのは、JRC製のNJM4565汎用オペアンプ。
NJM4565
基板上にポツンとあるのは、三洋のトランジスタ2SA1478。
2SA1478
米国製品だけど、国産の半導体が多く使われている。
 さて、肝心なスイッチは背面側に並んでいる。
背面に並ぶスイッチ
今回問題となるのは、画像中央のスイッチ3つである。これは、音響特性をスピーカの設置場所に合わせて切り替えるもので、一度設置すれば触る事は少ない。

 取り外して分解清掃しようと思い、基板上のハンダを吸い取ったのだが、何故かビクともしない。「へ?何で外れんの??」よく見ると、部品面側もがっちりハンダ付けされているではないか。「うわっ、こりゃ外れんわなぁ。」
 通常、スイッチの筐体も銅箔パターン面側はアースにハンダ付けしてある事が多いのだけれど、この製品は部品面側のアース面に四隅共がっちりハンダ付けしてあるのだ。通常のハンダ吸引器や吸取り線で何度吸引してもハンダを取り切れない。
こんな状態だと、熱容量の大きいツイーザー(ハンダごてがピンセット状に2本セットになっている)が2本無いと外せない。

 「ウーム、どうしてくれようぞ...。」考え込む事しばし。スイッチを改めて細かく観察すると、横から接点が少しだけ見えている。
スイッチ横側から接点が見える
「仕方ない、エレクトロニッククリーナーで洗浄しよう。」一つ一つクリーナーを噴射したら、汚れが落ちるように数回動かす。
エレクトロニッククリーナーで洗浄中
クリーナー成分が完全に抜けるまで時間が掛かるので、半日ほど放置したら再び洗浄して動かし、また半日放置して...というのを3日間繰り返した。

 作業が終わったら、改めて設置して再び測定する。
改めて測定中
前回よりも低域が改善され、凹凸の具合もやや少なくなった。
グラフの凹凸が少なくなった


 更に、愛聴盤の一つであるPLANET XのアルバムQUANTUMで音を徹底的にチェックする。
音チェック兼用CD
低域の力感は力強く、シンバル類のキレやシンセサイザーの高音の伸びも良い。音の定位や各音源の分離具合も申し分ない。購入直後に「おぉっ、良い音じゃん!」と感じた当時の雰囲気を完全に取り戻している。これなら、もう大丈夫だ。
 各スイッチは音響特性を変える為の物、という事はオペアンプで構成されているイコライジング回路に直接繋がっている筈。となると、音声信号がそのままスイッチの接点を通過しているのだから、接点上の抵抗を取り除けば音が戻るのは当然なんだけれど、実際にやって見ると一寸感激してしまう。(笑)

 スイッチを分解してオーバーホールできなかったのは少々残念だったけれど、一寸した作業で本来の音に戻せて良かった。目出度しメデタシ、である。
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