カメラを分解:キャノン オートボーイ2クォーツデート [カメラ]
先日分解したオートボーイ105と一緒に出てきた、CanonのAuto Boy 2 Quartz Dateを分解した。
このカメラはまだ昭和だった1983年、爆発的に売れたオートボーイの後継機種として登場、レンズは38mm F2.8、近赤外光投射の三角測量方式オートフォーカス、自動巻き上げ・自動巻き戻し、露出制御も電子制御プログラム式という自動ずくめのカメラである。
まずは外装から外して行く。外見を気にしているのか、グリップラバーの裏側にもネジがあったりするので、注意深く観察しながら分解する必要がある。
こういったネジ類を見逃すと、何時まで経っても分解できないので要注意だ。外装を外していけば、自然と裏蓋も分離できる。
「クォーツデート」と謳っているだけあって、フィルム押さえ板に日付を印字する枠が設けられている。
外装を一通り外すとこんな感じ。
レンズ周辺をアップしてみると、こんな感じ。
レンズ右側に露出制御用の採光窓が見える。レンズ外周にはフィルム感度によって採光窓へ入る光量を調整する調整フィルタがある。
フィルムに印刷されたパターンは整然とした配列になっている。外周部を外すと、レンズ向かって右側に丸い採光部が見える。
全体を見回すと、こんな感じ。
ファインダー部を拡大すると、ファインダーから見えるシンボルマークはフィルムに印刷されたものを見ているのだと判る。
グリーンの指針はギアと連動して動くようになっている。
本体前面にはフレキシブル基板が貼り付けられている。
この頃の機種になると既にカスタムICを多用して基板を簡略化しているので、部品点数は少ない。
レンズ周囲を覆っている樹脂の板を外すと、ピント調節に連動するギアが見えてくる。
他の部位にあるギアと違い、グリス類は一切使われていない。レンズに付着するのを恐れたのだろうか?
フィルム給送部にはギアが多く配置されている。
ここは樹脂の板を剥がす度にギアが見えてくる。
ファインダー部は別工程で完成したものを合体させているようだ。
フィルム給送部とは独立しており、更に後から半田付けしたと思われる箇所が多い。少々強引に分解すると、その下にはフィルム巻き戻しに関わるギアが並んでいる。
更に分解すると金属製の地板が見える。
それを外すと、細かいギアが見えてくる。
本体上部がピント調節用、下部がフィルム巻き戻し用のギアだ。これらのギアを取り外すと本体上部の分解はほぼ完了となる。
右側に見える金属製のギアが付いているのが、唯一の動力源となっているモーターである。
基板類を剥がすと、本体だけとなる。この本体は樹脂製だ。軽量化のためだろう。
ファインダー部にはピント検出用の素子が入っているので、フレキシブル基板と配線が繋がっている。
レンズと切り離してシャッターユニットを取り出す。
シャッターは右側にあるコイルによる電磁駆動式で、コイルを外すとやや殺風景になる。
反対側を見ると、こんな感じ。
シャッターを少し明けて見る。
開口部は随分と歪だが、この手のカメラは写っていれば良いので、円形に拘る必要はないのであろう。シャッター全開ではほぼ完全な円形である。
シャッター部を更に分解すると、シャッター羽根が見える。これは絞りも兼ねている。
全開では円形となるが、それ以外は歪な開口の形状となる。
この辺りは前回分解したオートボーイズームとほぼ同じだ。
ファインダー部左側に組み込まれていた基板に、ピント検出用素子が見える。
その裏にはカスタムICらしきものが載っている。
ファインダー部右側にはピント検出用の赤外線発光素子が入っていた。
ファインダー部の中央には、ピント合焦表示用の赤いLEDが入っている。
フレキシブル基板を取り外すと、ストロボまでが配線で繋がっている。
ストロボのチャージ回路は小さな基板にまとめられている。
受講素子はICにパッケージ化されたカスタムICだ。
ファインダー部は、斜めになっている中央のハーフミラーがガラスで、それ以外は全て樹脂製である。
この部分を更に分解すると、樹脂性レンズの形状が良く判る。
レンズ部を良く見ると、バルサム切れを起こしている。
出来ればLマウント化するなどして再生したかったが、これでは無理だなぁ。
残った裏蓋を分解する。
この頃はまだ赤外線LEDは使われておらず、一般的な豆電球をわざと低い電圧で駆動して赤外線を得ていたようだ。その赤外線を裏蓋内側に接着された全反射ミラーでフィルム焼き込み窓にある液晶パネルへ照射するような構造となっている。
勿論、液晶パネルには赤外フィルムが貼り付けられている。試しに豆電球に3Vを加えてみると、とても明るく光った。
裏蓋の回路は電源がCR2032ボタン電池だから、実際には3V以下の電圧でこの豆電球は駆動されていただろうから、ここまで明るく光ることは無いと思う。
最後にストロボ部が残ったが、どうやって分解するのかが判らない。
でっ、「エイヤっ」と割ってみると、熱融着して組み立てられていた。これでは破壊を伴わない分解は無理だわナー。
分解した序に、圧電素子を使って発光する様子を撮影して見た。このブログ初の動画映像である。(笑)まずは圧電素子一つで発光させたものから。
因みに、ここで使っている圧電素子は30年ほど前に実験用として仕入れたものである。昔ならチャンネル切替がダイアル式のテレビにも入っていたが、今使われているのはガス台の着火装置程度しか知らない。
今回の分解で使えそうな部品は単たるコンデンサとトランジスタがメインだ。
前回分解したオートボーイズーム105よりも8年ほど前のモデルであるが、樹脂の柔軟性に依存したグロメット形状の嵌め込みが殆ど、フレキシブル基板も両面テープで接着後に半田付けしたと思われる箇所が多数あり、やはり修理を全く考えていない構造である。この時代でも、既に修理を考えていない設計となっているようだ。
今、カメラ店に行くと店頭に動かなくなった全自動オートフォーカスのコンパクトカメラがジャンクとして山積みになっている。それらを見る度に「修理はかなり難しいんだろうな」とは思っていたが、分解してみて「修理は殆ど不可能」という考えに変わった。バブル景気が生んだ「使い捨て」の設計思想はこんなところまでに沁み込んでいたのだ。(滝汗)
このカメラはまだ昭和だった1983年、爆発的に売れたオートボーイの後継機種として登場、レンズは38mm F2.8、近赤外光投射の三角測量方式オートフォーカス、自動巻き上げ・自動巻き戻し、露出制御も電子制御プログラム式という自動ずくめのカメラである。
まずは外装から外して行く。外見を気にしているのか、グリップラバーの裏側にもネジがあったりするので、注意深く観察しながら分解する必要がある。
こういったネジ類を見逃すと、何時まで経っても分解できないので要注意だ。外装を外していけば、自然と裏蓋も分離できる。
「クォーツデート」と謳っているだけあって、フィルム押さえ板に日付を印字する枠が設けられている。
外装を一通り外すとこんな感じ。
レンズ周辺をアップしてみると、こんな感じ。
レンズ右側に露出制御用の採光窓が見える。レンズ外周にはフィルム感度によって採光窓へ入る光量を調整する調整フィルタがある。
フィルムに印刷されたパターンは整然とした配列になっている。外周部を外すと、レンズ向かって右側に丸い採光部が見える。
全体を見回すと、こんな感じ。
ファインダー部を拡大すると、ファインダーから見えるシンボルマークはフィルムに印刷されたものを見ているのだと判る。
グリーンの指針はギアと連動して動くようになっている。
本体前面にはフレキシブル基板が貼り付けられている。
この頃の機種になると既にカスタムICを多用して基板を簡略化しているので、部品点数は少ない。
レンズ周囲を覆っている樹脂の板を外すと、ピント調節に連動するギアが見えてくる。
他の部位にあるギアと違い、グリス類は一切使われていない。レンズに付着するのを恐れたのだろうか?
フィルム給送部にはギアが多く配置されている。
ここは樹脂の板を剥がす度にギアが見えてくる。
ファインダー部は別工程で完成したものを合体させているようだ。
フィルム給送部とは独立しており、更に後から半田付けしたと思われる箇所が多い。少々強引に分解すると、その下にはフィルム巻き戻しに関わるギアが並んでいる。
更に分解すると金属製の地板が見える。
それを外すと、細かいギアが見えてくる。
本体上部がピント調節用、下部がフィルム巻き戻し用のギアだ。これらのギアを取り外すと本体上部の分解はほぼ完了となる。
右側に見える金属製のギアが付いているのが、唯一の動力源となっているモーターである。
基板類を剥がすと、本体だけとなる。この本体は樹脂製だ。軽量化のためだろう。
ファインダー部にはピント検出用の素子が入っているので、フレキシブル基板と配線が繋がっている。
レンズと切り離してシャッターユニットを取り出す。
シャッターは右側にあるコイルによる電磁駆動式で、コイルを外すとやや殺風景になる。
反対側を見ると、こんな感じ。
シャッターを少し明けて見る。
開口部は随分と歪だが、この手のカメラは写っていれば良いので、円形に拘る必要はないのであろう。シャッター全開ではほぼ完全な円形である。
シャッター部を更に分解すると、シャッター羽根が見える。これは絞りも兼ねている。
全開では円形となるが、それ以外は歪な開口の形状となる。
この辺りは前回分解したオートボーイズームとほぼ同じだ。
ファインダー部左側に組み込まれていた基板に、ピント検出用素子が見える。
その裏にはカスタムICらしきものが載っている。
ファインダー部右側にはピント検出用の赤外線発光素子が入っていた。
ファインダー部の中央には、ピント合焦表示用の赤いLEDが入っている。
フレキシブル基板を取り外すと、ストロボまでが配線で繋がっている。
ストロボのチャージ回路は小さな基板にまとめられている。
受講素子はICにパッケージ化されたカスタムICだ。
ファインダー部は、斜めになっている中央のハーフミラーがガラスで、それ以外は全て樹脂製である。
この部分を更に分解すると、樹脂性レンズの形状が良く判る。
レンズ部を良く見ると、バルサム切れを起こしている。
出来ればLマウント化するなどして再生したかったが、これでは無理だなぁ。
残った裏蓋を分解する。
この頃はまだ赤外線LEDは使われておらず、一般的な豆電球をわざと低い電圧で駆動して赤外線を得ていたようだ。その赤外線を裏蓋内側に接着された全反射ミラーでフィルム焼き込み窓にある液晶パネルへ照射するような構造となっている。
勿論、液晶パネルには赤外フィルムが貼り付けられている。試しに豆電球に3Vを加えてみると、とても明るく光った。
裏蓋の回路は電源がCR2032ボタン電池だから、実際には3V以下の電圧でこの豆電球は駆動されていただろうから、ここまで明るく光ることは無いと思う。
最後にストロボ部が残ったが、どうやって分解するのかが判らない。
でっ、「エイヤっ」と割ってみると、熱融着して組み立てられていた。これでは破壊を伴わない分解は無理だわナー。
分解した序に、圧電素子を使って発光する様子を撮影して見た。このブログ初の動画映像である。(笑)まずは圧電素子一つで発光させたものから。
ダウンロードは🎥こちら
次は圧電素子を2つ使ったもの。ダウンロードは🎥こちら
スロー再生してみると、放電の様子が良く判ると思う。なお、そのまま再生すると綺麗に見えないことが多いので、一旦ダウンロードして映像ソフトで見る方が綺麗に再生できると思う。因みに、ここで使っている圧電素子は30年ほど前に実験用として仕入れたものである。昔ならチャンネル切替がダイアル式のテレビにも入っていたが、今使われているのはガス台の着火装置程度しか知らない。
今回の分解で使えそうな部品は単たるコンデンサとトランジスタがメインだ。
前回分解したオートボーイズーム105よりも8年ほど前のモデルであるが、樹脂の柔軟性に依存したグロメット形状の嵌め込みが殆ど、フレキシブル基板も両面テープで接着後に半田付けしたと思われる箇所が多数あり、やはり修理を全く考えていない構造である。この時代でも、既に修理を考えていない設計となっているようだ。
今、カメラ店に行くと店頭に動かなくなった全自動オートフォーカスのコンパクトカメラがジャンクとして山積みになっている。それらを見る度に「修理はかなり難しいんだろうな」とは思っていたが、分解してみて「修理は殆ど不可能」という考えに変わった。バブル景気が生んだ「使い捨て」の設計思想はこんなところまでに沁み込んでいたのだ。(滝汗)
ブログ記事と同じカメラを購入後、レンズカバーが閉まらなくなりました。また、採光窓が4番の1閉まっています。愛着があるカメラなので修理をしたいのですが、修理依頼は高いため自分で行いたいと思っています。可能と思われますか?
by なが (2022-02-21 18:27)
ながさん
レンズカバーなら外装部ですので技術的には難しくないと思いますが、カメラを分解した経験が一度も無いとなるとハードルは相当高いと思います。
修理費が高いのには当然それなりの理由があっての事ですし、セルフ修理で万一直らなかった場合はどの修理業者も受け付けてくれない事も考えられます。
最終的にはご自身でどこまで腹を括る事ができるか?ですね。
by Rifle (2022-02-21 20:04)