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カメラを分解!キャノン オートボーイズーム105 [カメラ]

 家の中を整理していたら、親父が生前に使っていた全自動カメラなどが出てきた。その一つがこれである。
CANON AUTOBOY ZOOM AF105
 35-105mmズームレンズの全自動カメラで、3点評価測距式オートフォーカス,オートデート機構,ワイアレスリモートコントロールというのが主な機能である。性能的には他社と大差無く、標準的なスペックと言えよう。
 ワイヤレスリモートコントロールは当時流行った機能で、集合写真等の時などに数m離れた所からシャッターをリモートで押せるというものだ。
 電源を入れてみると、一見正常に見えるがズームボタンを押すとまともに動かず、エラー表示が出て全く動かなくなってしまう。何度も操作しているとまぐれに動く場合もあるが、シャッターが切れる音がしてもフィルム巻上げの音がしない。要するに壊れているのである。(汗)
 「このままでは単なるゴミにしかならんな...じゃぁ分解してみよう」。

 まず、外から見えるネジを外し、トップカバーを外す。
IMG_0673.JPG
ボタン操作部の基板が見える。更にサイドのパネルも外す。
IMG_0674.JPG
向かって左側にストロボ用の黒いコンデンサが見える。
 かなり梃子摺ってフロントカバー部が外す。
IMG_0675.JPG
フロントと底の部分が一体化したカバーになっており、しかもネジは使っていない。嵌めてあるだけだが、かなり彼方此方を捻らないと外れない。この組立工程では結構時間が掛かっていたのではないだろうか?
 次に、上から順番にバラしていく。樹脂カバーを外すと距離計が見える。
IMG_0676.JPG
距離計の光学部分は接着剤で貼り付けになっている。この部分は、恐らく別ラインで組立調整されたものだろう。ネジを外すとボタン部の基板を支えるプレートごと外れる。
IMG_0677.JPG
力が掛かるようには思えないが、基板のプレートは金属製だ。プレートとフレキシブル基板は強固な両面テープで接着されていた。
 更に、距離計を外す。
IMG_0678.JPG
画像では見えないが、フィルムを支える送り側スプールには、送ったフィルムの長さを測るエンコーダが付いている。

ボタン基板の下側にある金属プレートを外すと、歯車が沢山見える。
IMG_0680.JPG
画像の下半分のギアがフィルム巻上げに関わる部分で、上半分はレンズの沈胴・伸長を制御する部分やピント調節の部分となっている。ギアは一部を除いて全て樹脂製で、精度が必要な所だけを金属製にしているようだ。ギアには全てグリスが塗られている。この部分を更にバラす。
IMG_0683.JPG
中央に動力源のモータの軸が見える。やや見難いが、画像右上に乗っている部品が、逆さまの状態で軸に差し込まれていた。遊星ギアみたいだが、軸の周りに奥まって見える小さなギアはフィルム巻上げと巻き戻し,レンズの沈胴伸長、ズーミング、ピント調整にそれぞれ接続しており、一つのモータで全てを動かす構造になっている。

 レンズ側をバラすが、ここで「うーん、何故基板が素直に外れないのぢゃ?」としばし悩んだが、引っ張ってみて判った。本体内部から出ている金属ピンに半田付けしてあるんだな。
IMG_0684.JPG
回復させる積りは無いし、こてペンのような細い半田ゴテでないと外せないほど小さいので、力づくで外す。この部分の組立工程は結構面倒で、工数はかなり掛かったのでは?と思う。外れた基板を見るとチップ部品のオンパレードだ。
IMG_0686.JPG
カスタムICやカスタム部品が多い。TA8303FとTA8304Fは内臓モータのドライブ用ICで、トランジスタ6個とバイアス回路がワンチップにまとめられたもの。

 本体向かって左側はストロボチャージ用コンデンサが場所を取っている為か、部品は少ない。
IMG_0687.JPG
 本体底部の金属パネルを外すとスプロケット駆動用のギアが見える。
IMG_0688.JPG
ギアと基板を外すと、この場所に部品は殆ど無い。
IMG_0689.JPG

 本体向かって左側の上を外すとモータが姿を現す。
IMG_0690.JPG
本体側にある大きなギアは次の画像で見える小さなロータリーエンコーダに繋がっている。
IMG_0691.JPG
この小さなエンコーダは薄い透明な樹脂の板にインクで細い線が放射状に刷り込んであり、これでフィルムの巻上げ量をカウントしている。
 上側の部品全てを取り外す。カメラ本体の骨格は樹脂製だ。
IMG_0692.JPG
レンズの付け根左側に見えているギアがレンズの沈胴伸長とズームを動かすレンズ側ギアに繋がっている。ここでもレンズの外し方が判らす、しばし考えていたが、本体骨格内にあるスピンドルがレンズと繋がっていた。この軸だけでレンズ全体を支えている。
IMG_0693.JPG
ここの組み立て作業は、レンズ側にある小さなギアを回しながら填めることになる。

 レンズは沈胴伸長で動く外側とレンズを保持する内側の2つに分かれる。
IMG_0694.JPG
内側は、更にズーミングで伸縮する外側の筐体と、焦点距離が印刷されたレンズ保持部分とに分かれる。外側筐体の内側にはスパイラルギアが刻まれていて、内側とかみ合うようになっている。
IMG_0696.JPG
外側の樹脂はレンズの第一群が接着されていて、第二群と第三群はピント調節とシャッターも含めた一つのユニットになっている。横から見ると、ピント調節用のモータ(透明樹脂の部分と両側のコイル)とギアが見える。
IMG_0697.JPG
ここを更にバラして、ネジで固定されている部分を外す。
IMG_0698.JPG
スローシャッターに気付かず少しブレてしまった。(汗)ギアを回すと第二群のレンズが伸びる。
IMG_0700.JPG
ここでもまた分解方法に少々悩んだが、ネジ止めだけでなく一部接着されていた。ちなみに、接着された部分は外からは見えない。
IMG_0703.JPG
手前が第三群のレンズだ。縦長の2つのコイルはシャッター駆動用、その奥に見えるコイルと金属がピント調整用のモータである。コイルの部分を外して拡大すると、こんな感じ。一緒に写っているのはcmスケールの金属定規である。
IMG_0704.JPG
左がシャッター駆動用アクチエータ、右がピント調節用モータ。レンズに組み込んであるものだけに、サイズは小さい。
 第二群レンズとシャッターはスピンドル軸で繋がっている。
IMG_0705.JPG
ギアを回すと分離できた。シャッターは2枚羽根だ。
IMG_0706.JPG
絞りに相当する部品は無く、シャッターと絞りは兼用である。随分と変わった格好をしているが、露光面積と構造単純化の為にこうなったのだろう。当然、ボケ具合は丸い絞りに比べれば劣るが、全自動コンパクトカメラにそこまで要求するのは酷というものであろう。

 レンズ先端の樹脂プレートを外すと、第1群のレンズを抑えている金具が見える。
IMG_0707.JPG
このプレートを外して反対側からレンズを押すと、ようやく樹脂部分とレンズが分離する。接着されているのでかなりの力が必要だ。
IMG_0709.JPG
樹脂部分の内側にレンズ繰り出し量を測る棒状のエンコーダが取り付けられていた。
IMG_0708.JPG
これも透明な樹脂に等間隔の線が印刷されている。

 距離計とストロボは一つの樹脂フレームに載っている。
IMG_0710.JPG
距離計の黒い樹脂の後ろ側にはピント検出用のパッシブセンサーが接着されていた。
IMG_0712.JPG
とても小さな部品だ。黒いカバーは赤外線だけを通すようになっている。
 距離計を拡大するとこんな感じ。
IMG_0713.JPG
画像上側に少し飛び出している所が接眼部で、その直ぐ右側がズーム式のファインダー、左側はリモートコントロールの受光部で、実際にはレンズの前に赤外光のみを通す樹脂製の黒いカバーがある。

 本体の分解はこれでお終い、残るはリモートコントロールのユニットだ。
IMG_0718.JPG
結構あっさりした基板が入っているだけで、電源はボタン型電池CR1220が2個である。
 ここまで分解するのに掛かった時間は2時間ほどであった。

 分解してみると、かなり力の要る填め合いが数箇所あり、配線してから半田付けしたと思われる箇所が彼方此方に散見された。実際の製造ラインを見たことは無いが、結構な手間をかけて組み立てられていたことが判る。

 当時の経済状況はバブル絶頂期、大量生産でコストを極力低下させて利益を出すという考え方で設計製造されたようだ。修理時の分解を考えると接着という手段は使えずネジ止め等となり、組み立て工数も部品点数も増えるから、恐らく、設計時から修理しないという前提だったのであろう。
 分解を始めた時は「できれば修理しようかな」と思っていたが、接着箇所が非常に多くて「こりゃ無理だ(>_<;)」と悟った。(笑)また、機械的な故障は無く、動作不良は回路側が原因と考えられるが、回路には一般に市販されていない部品が多く使われていて修理は難しい。
 一つ一つ観察し考えながら分解していくと、当時の製造技術も含めた設計技術や思想が見えてきて実に興味深かった。
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Tomtom

オートボーイは私も持っていますが、内部はこんなにすごいのですね。
よくこんなに分解できたものだと感心しています。
電解コンデンサーも使っているようだし、電気系がいかれて使えない(使う気もないけど)かな~。
レンズだけでも取り外して取っておこうかと思っていたけど、とても無理だということがよくわかりました。
オブジェとして取っておくことにします。


by Tomtom (2012-11-23 08:36) 

Rifle

Tomtom さん

拙者も、これほど内部構造が複雑だとは思っても見ませんでした。
電解コンデンサーは全て正常でしたから、チップ部品のどれかが不良となっているような感じでした。
分解後の再組み立てはとても難しいと思うので、拙者もオブジェとして保存する方が良いと思います。
by Rifle (2012-11-23 14:32) 

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