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公務員と雇い止め [雑感]

IMG_2164S.JPG 少し前になるが、9月23日の朝日新聞朝刊に「有期雇用の行方2 声あげる非正規公務員」という記事が出ていた。
 中身を大雑把に言うと、パート契約の職員が「1年単位での契約更新だが、長い間に亘って専門の業務をこなしているのだから、一方的な更新拒否は不当だ」と主張している、というもの。事情を何も知らない人がこの記事を読んだら「なんて酷い仕打ちをするんだ」と感じるかも知れない。

 何処の自治体でも支出削減に悩んでいて正規職員だけでは業務が回らないので、パート職員、言い換えれば非常勤公務員としてかなりの人数を配置している。
 1年単位の予算決算を繰り返している自治体では手続き上の問題から複数年契約は結べないので、毎年契約をすることになる。同一人物と契約を何年も続ける場合もあれば、人を毎年入れ替える場合もあり、これはその職場の都合によるが、福祉関係や年金関係などの専門的な知識が必要な職場ほど同一人物と契約を更新し続けるケースが多い。契約する度に業務を説明する手間が省けるし、前年の勤務状態も分かっているので扱い易いからだ。しかも、期間の途中で辞められると困るから、日頃から愛想よく接するようにしている事が多い。

 ただ、パート職員は正職員ではないので、契約を更新するかどうかはその自治体側の判断となる。正職員が増員されたり業務量が変わったりして、パート職員が不要になる場合だって当然出てくる。
 民間の場合は、(決して良い方法とは言えないが)経営が危なくなれば整理解雇という奥の手が使えるが、公務員の場合は大きな犯罪でも犯さない限り首を切る方法が無い。しかも、自治体は職員数が条例等で決められていることが多く、簡単に増員・減員ができない仕組みになっている。また、中途採用は色々と面倒な手続きが必要なので、余程切羽詰った事情が無い限りは行わない。
 一方、自治体の業務は法律改正や国・県の意向によって大きく変わることがあるので、業務量が増えると既存人員では不足して収拾が付かないこともある。だから、その調整弁としてパート職員を採用するのである。この辺りは民間の会社が人材派遣業者を利用するのと全く同じ構図であるが、違うのは何度も契約を更新しても正職員採用する必要が無い、公共団体には基本的に倒産は有り得ないので失業保険には入れない、人材派遣のように期間途中での打ち切りは無いので派遣労働よりは遥かに身分が安定している、という3点である。
 記事に出て来た人達は、ひょっとしたら、自分の置かれている立場を知る方法が無く、周囲の反応も良いから「私は信頼されている」とか「私はこの職場では有能である」と勘違いしているという可能性もゼロではないし、本当に不当な扱いを受けているのかも知れない。


 ご存知の方も多いかも知れないが、拙者は長年コンピュータ業界で鉛筆土方(対外的にはシステムエンジニアという職種名を使う)をした後、任期付地方公務員として5年間、某市役所で課長補佐をしていた。
 拙者の場合は法律を根拠に3年契約で採用となり、その後2年延長されて法律上の上限である5年間までとなり、その間におよそ10億円の税金の無駄遣いを止めさせた実績を上げたが、契約期間を終えたらそのままお払い箱であった。
 失職(「退職」ではない)時、上位上司の部長から「人事に掛け合ってこのまま何とか継続できないかと交渉したがダメだった」と言われたが、実際には人事部門と「え?これ以上は延長できん?はぁ、そうかい」と話した程度だったのであろうと推測している。議会で「合併により全職員の1割が剰余となっており、新規採用を控える等して10年後を目処に剰余の解消を目指したい」と答弁してしまっているから新規の中途採用は困難という事情もあるとは思うが、自分の収入に関係ないことを熱心に説得するとは思えないし、増してや周囲の職員と同化する事を拒否し「血税を何でそんなモノに使おうとするんだっ」と各部署と衝突を散々繰り返していた拙者を無理に引き止める理由が見当たらない。だから、訣別に際しての挨拶と受け取るのが正しい姿であろう。

 記事によれば、わざわざ手間をかけて採用試験した上で不採用になったとなると、恐らくは本人は気が付いていないであろう何某かの理由があるのでは?とも思うが、契約を拒否された側の話しか載っていないので、記事の内容が本当に正しいかどうかは判断が付かない。
 こういう中途半端で何を主張したいのかが判然としない記事を臆面も無く掲載してしまうとは、やはり日本のマスコミは只者ではないな、と感じ入る次第である。
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ブルル

デジタル土方はよく耳にしましたが、
鉛筆土方とは初耳ですわ!
素晴らしい呼び名ですなぁw
しかし、昨今の原発事故報道といい
この国のマスコミ&ジャーナリズムは
正しく機能していませんなぁ。
by ブルル (2011-10-01 01:26) 

Rifle

ブルルさん

「鉛筆土方」は昭和の時代から業界内で使われていた言葉です。デジタル土方は平成になってからの言葉ですね。
国内マスコミは脳がメルトダウンしているような感じで、救いようが無いです。
by Rifle (2011-10-01 09:23) 

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