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旅するカメラ(その3) [カメラ]

(前回からの続き)
 元々一眼レフは、レンジファインダー機が苦手とする近寄った撮影(マクロ撮影)も対応できるように開発されていて、ズームレンズも使えるからレンズ交換の手間も省ける。ズームレンズは暗いので室内など光量の少ない場所では手持ちで撮影出来ないことも多いが、レンズを何本も持たずに済むというのがその欠点を補って余りある。だから旅行だけでなく、一寸出かけるにもコンタックスS2bとバリオゾナー28-85mmを持ち歩くようになった。
CONTAX S2b, Vario-Sonnar 28-85mm
超広角が必要ならディスタゴン21mmを追加するだけだ。
 但し、一眼レフはその構造からレンジファインダー機に比べて嵩張るし、交換レンズも大きくて重い。レンジファインダー機ならレンズ数本と共に適当なバッグに放り込めば良いが、一眼レフはある程度強度のあるバッグでないと、カメラやレンズの重さでバッグが撓んだりする。それに、ツァイスのレンズは国産のレンズに比べて重い。バリオゾナー1本と、M6用28mm、35mm、50mm3本の重さは余り変わらないし、嵩もやはり殆ど変わらない。

 一眼レフは便利だが、重さや嵩という面ではレンジファインダー機には敵わない。だから重さや嵩が問題になるバイクではM6やR4Aを使う時があり、複数のカメラやレンズを使い分けるという状態が長く続いた。
 更に、ツァイスレンズの写りの良さを見て「ヨーロッパの標準的一眼レフと言われているライカの一眼レフの写りはどうなんだろう?」と気になって仕方がなくなり、遂にはライカR6.2とR8を中心にレンズも複数揃えるまでに肥大化してしまった。ここまで来てしまうと、レンズの写り具合の違いを楽しむ「レンズグルメ」になっていたようにも思う。カメラ雑誌から仕入れた知識も手伝って、国産カメラやローライ35などの小型カメラも気になりだして中古を買い漁るようになり、機材はどんどん増えていった。
 35mmカメラだけでもこんな状態だから、中判や大判カメラも当然複数台を使い分けていて、かなり大きな防湿庫に鮨詰めに入れても機材全ては入り切らず、更に防湿庫を買い足しても足りないほどだった。
 カメラ機材が増えると、毎回どのカメラを持ち出すのか悩むし、鮨詰めの防湿庫から取り出すもの結構面倒な作業になる。
 それから、不思議な事に機材の数が増えるにつれて、フィルムの消費量が徐々に減っていった。
 そんな時、阪神大震災が起きた。

 大きな地震が起きれば、例え防湿庫に入っていても機材に大きなダメージを受けるのは避けられない。それに、機械制御式カメラは定期的に動かしていないと調子が悪くなり易く、月一回程度動かすようにしていたから、その手間だけでも結構時間が掛かっていた。「多くの機材を抱えるのは、決して良い事ばかりではないな」と考えるようになった。
 それからは、使用頻度の低いカメラやレンズを少しずつ手放していったが、手放したのは主に国産の一眼レフや中判で、M6やR4Aなどは手元に残していた。

 改めてスナップ撮影したフィルムを見渡してみると35mmで撮影したコマが多く、21mmは泊まった部屋や広い景色をまとめてを撮影する時に使う程度、50mmも周囲をカットしたい時や人通りの多い場所で使う程度で、どちらも使用頻度は案外低い。
 そうなると「いっそのこと割り切っちゃって、レンズ一本でも良いんじゃないかい?」と考えるようになり、それからしばらくはローライ35ばかりを使うようになった。
Rollei35Classic
この機種も一時期は35B・35クラシック・35TE・35Tという代表的な4種類を全て揃えるという状態に陥っていた。但し、カメラ雑誌で「素うどん」に例えられていたC35は価格が高騰していたので手を出さずに済んだ。(笑)
# C35は露出計すら無い、言い換えると電池を全く使わない機械制御式のカメラ。
 ローライ35はレンズや露出計によって幾つか種類があるものの、どれもレンズは40mmでピント合わせが目測式の機械制御式カメラだ。ピント合わせの機構が無いので、レンズを沈胴させると掌より小さなサイズになる。そのかわいらしさから、今でも人気は高い。
 このカメラなら軽くてポケットに入るし、ダイアルを操作しない限り露出が変わることは無い。しかも、ピント合わせは目測だから、絞り値に対応する被写界深度(ピントの合う範囲)目盛りを使って予めピント調節しておけば、それこそファインダーを見て構図を決めたら即シャッターを切って直ぐポケットに仕舞うなんて芸当もこなせる。
ちなみに、こういう撮影の仕方を「辻斬りショット」と呼ぶらしい。
フィルムがISO100の場合、晴天なら露出はシャッター速度を1/125s、絞りをF11・1/2にしておけば、暗い日陰などを除いてまず間違いなく写るから、細かいことを気にしなければ露出を設定する手間も省ける。
 これでスナップ用カメラはほぼ決まったようにも思ったが、更に画質を追求したりするもんだから、フジカGS645やローライフレックス2.8Fなどの中判カメラも中古で入手し、一時期はローライ35とローライフレックス2.8Fの組み合わせばかりを使っていた。
IMG_1377.JPG
# ちなみに、今でもこの組み合わせで使う時もありますねぇ。

 しかし、レンズ一本だけでは不便に感じる場面もあり、その後「やっぱレンズ交換できる方が良いな」とM6やR4Aを使ったり、「マクロ撮影もやっぱ必要」とS2bを使ったりと、機材を取っかえ引き換えて使う状態になった。どの機材も時々使うので手放すことも出来ない。撮影対象を絞り込めないので、機材も絞り込めない状態になっていたのだったが、更に使い込んで行くうちに一眼レフの万能さがレンジファインダー機の軽さを凌駕するようになり、S2b以外の出番が殆ど無くなった。
 機材が色々あっても、一度にシャッターを切るのは一台のカメラだけ。それに、撮影会では中判しか使わない。どの機材も入手には苦労しただけに手放すのは忍びなかったが、機械制御のカメラは使わないと動きが渋くなったりするので、ただ持っているだけではカメラを腐らせてしまいかねない。色々考えた末に、35mmはS2bとローライ35クラシック、コンタックスT2の3台を残し、それ以外は全て売却してしまった。

 現在は、観光地に寄るような旅行では一眼レフのS2b、日帰りや移動が中心の旅ではT2かローライ35と使い分けている。バイクの時はローライ35を持つことが多い。行き先によってはローライフレックス2.8FやフジのGA645を追加することもある。
 断腸の思いでカメラ機材を整理したお陰で防湿庫も要らなくなり、今はドライボックスの大小2個に全てが収まっている。T2とGA645の2台以外は全て機械制御式なので定期的に動かしているが、数が少ないので大した手間ではなくなった。機材が減ると再びフィルムの消費量が増え出し、今でも結構な本数を撮影している。

 M6を手放す時、M6は他のどのカメラよりも電池の減りが少ないということに気が付いた。
 R4Aでは電池切れ表示が出て使えなくなったボタン電池LR44を、試しに他のカメラに使ってみたら、S2bでも電池切れの表示が出て使えない。ところが、M6に入れたら何の問題も無く普通に使える。そのまま使っていたら、結局M6を売却するまで電池切れにならなかったので、実際どの位使えるのかは判らないが、とにかく普通のカメラよりは遥かに電池が長持ちするのは間違いない。
 「エネルギーを無駄にしない」というドイツ魂をM6に見たような気がした。
(完)
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コメント 2

つなみ

(⌒∇⌒)ノ"こんにちは~♪
メリークリスマス♪
楽しい夜をお過ごし下さいネ。
by つなみ (2012-12-25 12:58) 

Rifle

つなみ さん

毎度どうもです&メリークリスマス!
by Rifle (2012-12-25 14:21) 

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