SSブログ

充電池の自動放電回路 [電子回路]

 普通の電池はマンガンかアルカリかを問わず、一度使ってしまうとそれっきりで再利用できずゴミになるし、電源としては容量に対して非常に高価で、しかもそのエネルギーの全てを取り出して使い切ることは殆ど不可能。だから、自宅では電池はなるべく充電池を使い、普通の電池は極力購入しないようにしている。
 数が多いのは単三と単四サイズのニッケル水素電池(以下、Ni-MHと略す)で、全部で16本ほど使っている。
 Ni-MHはニッカド電池ほどではないものの、やはりメモリー効果で充電が上手く行かない時もある。具体的には、いつもと同じように充電したのに使える時間が極端に短いという現象になって現れる。これを避けるにはきちんと放電させてから充電すれば良いが、その「きちんと放電」というのが結構厄介なのである。

 Ni-MHの技術資料を見ると、放電終止電圧はおよそ1.0Vとなっている。それ以上放電させると、Ni-MHを痛めてしまう。だから、放電中のNi-MHの電圧を監視して1.0Vになったら放電を止めるという回路を作成すれば良い。
 しかし、Ni-MHに貯まっている電気を吐き出させるのに、わざわざ別の電源を使う回路を使うというのは本末転倒にも思える。「だったら、放電させるNi-MHの電力を使えば良いじゃん[ひらめき]」と直ぐに思い付くけれど、Ni-MH1本の電圧は充電直後はおよそ1.4V、使い続けるとどんどん電圧は落ちていくので、低い電圧で動く回路でなければならず、かなり難しい。「うーん、こりゃーどうすっべー?」と思いながらネット上を彷徨っていたら「気の迷い」というサイトの「自己電源方式、オートカット電圧可変  ニッケル水素充電池・単セル放電器の製作」というページに行き当たった。誰でも考えることは同じなのネ。[わーい(嬉しい顔)]

 「気の迷い」では、放電のオンオフにNPN型の2SD2092を使っているが、そんな型番のトランジスタは部品箱に無いので、1Aという大きな電流を流せるもので、しかも飽和時(これ以上電流は流せん!無理すると壊れる!という状態)のVce(コレクタ-エミッタ間電圧:よーするにトランジスタ全体にかかる電圧)が0.3Vから0.4Vと低いもの、という条件で部品箱を漁ったら、出て来たのはPNP型の2SB564(画像左側)が一つだけ。
2SB564 and 2SC2377

 えぇーっとーぉ、そもそもトランジスタやダイオードに使われている半導体はP型とN型があって、電流はP型からN型にしか流れない。だから、NPN型トランジスタ(「2SC」や「2SD」で始まる型番のもの)の両側のN型を電源のプラスとマイナスに接続すると、プラス側はN型からP型となって極性が逆だから電流は流れない筈なのに、P型からマイナス側に接続したN型の方向へ僅かな電流を流すと、アーラ不思議、プラス側に接続したN型からP型を通り抜けてマイナス側に接続したN型へと電流がザザザーっと流れてしまい、しかも流れる電流はP型から流し込む電流に比例する、というのが動作の(かなりいい加減な[ふらふら])概要だった筈。

 「使うのはPNP型(「2SA」や「2SB」で始まる型番のもの)のトランジスタだから、プラスとマイナスをひっくり返せばOKね」と単純に考えたのが、この回路。
AutoCut Battery Discharger circuit diagram(B564 version)

見て判る通り、本当に回路を逆さまにひっくり返しただけですな。(笑)
 早速ブレッドボード上に組んでテストしてみる。すると...どうやっても上手く動かない。「ムムム、何故じゃー?」と思いながらも、あちこち電圧を計ったりして調べてみると、どうやら2SB564はコレクタ電流(トランジスタに流れる電流全部と考えてOK)が多くても少なくても0.3Vほどの電圧降下があるらしいと分かる。そうなると、もう一つのトランジスタのベース(NPN型の「P」になる電極)にかかる電圧が減ってしまう。それで回路全体が上手く動かないらしい。
 2SD2092のデータシートで調べたら、コレクタ電流が200mAならVceは0.2V以下、条件が整えば0.1V以下と極端に低い。「気の迷い」の作者は、その辺を考慮してこのトランジスタを選定したんだな。

 それから、「気の迷い」の回路では、放電を早く終わらせる為に1.5Ωというとても低い抵抗を使って1000mA近い大きな電流を流しているが、Ni-MH内部は化学反応で電気を作り出しているので、一気に取り出そうとすると化学反応が間に合わず、未だ電力が残っているのに一時的に電圧が低くなって放電が終了してしまう可能性がある。実際、1.5Ωの抵抗を使うと短時間で放電は終了するけれど、その放電させたNi-MHを20時間ほど放置して、1.5Ωだけを取り払った状態の回路で放電させると30分以上経っても放電が終わらないのだ。ちなみに、1.5Ωの無い状態での電流は220mA前後である。このことから、今回作成する回路の放電電流は300mA程度に抑えることにした。
 実は、今使っている充電器にも放電させる機能は付いているんだが、放電させる電流がかなり大きいらしく、メモリー効果を完全に打ち消すことが出来ていないと感じることがたまにある。だから、手持ちの部品を使って放電用の回路を作成できないだろうかと考えたのである。

 以上の事柄を踏まえた上で2SB564の代役を部品箱の中から探す。ネット上でデータシートを探しながら選定したのは2SB790(画像中央)と2SD734(画像左側)である。
IMG_4575.JPG

どちらも最大コレクタ電流は500mAだし、単に電流のオンオフをするスイッチとして使うので300mA流しても放熱の必要は多分無い筈。
# 勿論、ちゃんとテストしなきゃいけないんですけどね。(^^;)
 まず2SB564を2SB790に置き換えてテストしてみる。
IMG_4571.JPG
すると、停止させる電圧の調整範囲がかなり狭いものの、0.94Vで停止させることが出来たので、一応成功である。
 更に、NPN型の2SD734で回路を組み直す。
AutoCut Battery Discharger circuit diagram(B564 version)
これでテストすると、やはり停止電圧の調整範囲は狭いが、0.93Vで停止させることが出来た。

 2つの回路で動作が確認できたので、両方ともある程度時間をかけて発熱の様子を見た上でユニバーサル基板上に組み上げよう。
nice!(18)  コメント(4)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 18

コメント 4

みうさぎ

んん~理科の実験かぁ
難解だぁ(^_^;)

by みうさぎ (2012-09-20 19:04) 

Rifle

みうさぎ さん

今回はかなり難しくなっちゃいました。
なにせ、殆ど電子工学科の授業状態ですから。(笑)
by Rifle (2012-09-20 21:59) 

hosoP

お手持ちのトランジスタに合わせて、回路構成をひっくり返す
アイディアは、素晴らしいですね。自分には出せそうにありません。
最近はディスクリート回路を組むこともすっかり無くなって
しまいましたが、原理原則を理解するためにも、こういった
ことは大事ですね。大変勉強になりました、ありがとうございます。

by hosoP (2012-09-22 20:09) 

Rifle

hosoP さん

手持ちの部品で何とかしようと悪あがきした結果が構成をひっくり返すという結論になったんですが、正直動くかどうかテストするまで不安でした。(笑)
こんな拙い内容でも、喜んでいただければ、拙者ににとってはそれこそ至上の喜びです。
by Rifle (2012-09-22 21:41) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

トラックバックの受付は締め切りました