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パワーアンプ用リモコンの不具合調査(依頼品) [電子回路]

 熊本のtamaさんから「リモコンが動かない」旨の依頼があり、数日後に問題のリモコンが到着した。
送られてきたリモコン
早速筐体を分解して基板を取り出す。
中の基板を取り出したところ
到着前、この基板の画像がtamaさんのブログに出ていて「あれぇ?どうして部分的に茶色いのかなぁ?」と不思議だったが、実物を見た瞬間「ゲッ、これ液漏れやん!」(汗)電池用の電極を見ると、やはり電池から漏れた電解液で腐食されている。
# 電解液は強いアルカリ性で危険。
液漏れで痛んでいる電池用電極
よく見ると、電池用電極の近くに小さな穴が開いている。基板の位置決めの穴だ。
電池用電極の近くに小さな穴がある
電解液がここから基板面側に流れたんだろう。
 電極のある面は電解コンデンサとセラミック発振子のみで、発振子は4MHzの物が使われている。
4MHzのセラミック発振子
時計や時間計測に使う訳ではないので、高精度だけど高価な水晶発振子を使わず、安価なこの素子を選んだようだ。
 電解コンデンサは、1000μFと異様に容量が大きい。
容量が大き過ぎる電解コンデンサ
他の回路と共用して部品代を抑える為だろう。

 基板パターン側を眺める。
基板の銅箔パターン側を見たところ
穴の直ぐそばにあるICの周辺をよく見ると、案の定、電解液で銅箔パターンが酷く腐食している。
IC周辺の銅箔が腐食している
使われているICはPIC16F84という、8bitワンチップマイコンだ。
フラットパッケージのPIC16F84が使われている
動作電圧の幅が広く(2Vから6Vまで)、プログラム開発も簡単な為、1999年頃から盛んに使われいて、現在でも1個400円前後で売られている。個人レベルでも簡単に組み込みマイコンの基板を作成できるので、自作ブログ記事などで見かけることも多い。
 PICの1番ピン(画像右上)から5番ピンにかけての腐食が酷い。
DSC04097.JPG
真ん中の部品は電解液で外装が少し膨らんでいる。調べたらダイオードで、幸いなことに動作に異常は無かった。傷んだのは樹脂外装部だけで中までは浸み込まなかった模様。
 銅箔パターンは、3番ピン(RA4/T0CKI:I/Oポート&クロック入力)と5番ピン(Vss:マイナス側電源)がアース(GND)に落とされている。しかし、腐食が激しくてテスターで測ると繋がっていない。3番ピンはともかく、5番ピンが接続されていないのなら確実に動かない。試しに5番ピンだけ仮配線でアースに接続して動かしてみた。
5番ピンを仮配線でGNDに落とした
すると、予想通り赤外線LEDが光った。
赤外線LEDが点灯したところ
これで動かない原因を特定できた。電池から漏れた電解液が基板の銅箔パターンを腐食し、PICからアースに繋がる配線が切断された状態になって動かなくなったのだ。

 原因が分かれば対処は簡単、途切れた配線を接続し直せば良い。ただ、PICのピンとピンの間は0.5mmしかない。
ICのピン間隔は1mm
普段使っている半田ゴテのコテ先では太過ぎるので、滅多に使う事のない細いコテ先に入れ替える必要がある。
細いコテ先を用意したところ
細い電線を使ってPIC5番ピンの足先に慎重に半田付けする。
PICの足先に半田付けしたところ
もう一方はアースに半田付けする。
もう一方をアースに半田付けしたところ
3番ピンは腐食が激しくて半田がなかなか乗らず苦労したが、ピン本体をピンセットで削って奇麗な金属面を出し、ピンに直接半田付けという強硬手段に出たら出来た。(汗)
ピン2本とも配線し終わったところ
実際に動かして見ると、こんな感じ。

ボタンを押している間LEDが信号を出しているけれど、アンプが反応すれば押すのを止めるだろうから、電力消費はとても少ないと考えられる。電源は単4電池2本だが、結構長持ちするのではないだろうか。

 お相手となるアンプが手元に無いので、tamaさん宅でないと本当に直ったかどうかは判らない。
# tamaさん、何卒宜しゅうm(_"_)m
なお、回路的にはこれ以上は手が出ない。PICに書き込まれているプログラムが分からないのは何とかなるにしても、
# 内部設計だからねぇ...って、エンピツ土方にしか分からんよな。(笑)
LED点滅とアンプ動作がどのような関係なのかが不明なので、
# こっちが外部設計...(以下、同文)
動作を検証する方法が無くてお手上げなのである。

 このリモコンはバクーンプロダクツという工房?から出ている限定モデルのパワーアンプAMP-KUMAMOTO用だそう。
 序でにそのアンプをちょいと調べてみたが、SATRI回路とかいう物を使っているそうな。ちなみに、動作原理を説明しているページがあるけれど「...はーーーーーーーーぁ?(ノ;_ _)ノ」という感想でした。まぁ、世の中には本当に色々な方がいらっしゃる、ということで。(滝汗)

 今回修理できたのは、原因特定が簡単だったから...というよりも、拙者が調査に時間をかける余裕がタップリあったから。これが企業ベースだったら、一々原因の特定に工数を使ってられないだろうから、基板は丸ごと交換、故障した基板は恐らく廃棄となるだろう。
 人件費の上昇はゴミを増やす、という一面もありそうだねぇ。
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tama

神さま、仏さま、Rifleさま m(_ _)m
ブツは20日に届き、動作はバッチリでした。このリモコンで、主電源のOn/Off、ボリュームのアップダウン、ミュート、入力の切替ができます。すべてOKでした。
なお蛇足ながら、これは伊太利亜製プリメインアンプNORMA用です。
ほんとうにありがとうございました。
by tama (2018-07-21 08:32) 

Rifle

tamaさん
おやおや、NORMA用でしたか。これは失礼致しました。
無事動いてホッとしました。(^^;)ご報告有難う御座います。
by Rifle (2018-07-21 09:36) 

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