SSブログ

修理できるか?古いカーラジオ(その12:FMラジオも動いた) [電子回路]

前回からの続き)

 いよいよFM回路の調査に乗り出す。前回までで局発(局部発振回路)は10.7MHzと分かっているけれど、念の為に書き起こした回路図を見ながら基板のあちこちにオシロスコープのプローブを当てる。
オシロスコープで見る10.7MHzの波形
使っているオシロスコープは20MHzまでなので、この辺の周波数になると表示も細かくなってしまう。予備知識として局発の周波数を知っているから良いけれど、この波形だけを頼りに作業を進めるのはかなり辛いと思う。
 更に、同じ個所をもう一つのオシロスコープで見ると、こんな感じ。
デジタルオシロスコープでみる10.7MHzの波形
オシロに付いているリードアウト機能でも、およそ10.7MHzになっているのが分かる。

 さて、ここで使ったのは横河電機製のデジタルオシロスコープDL1620である。
横河電機製ディジタルオシロスコープDL1620
FM回路の動作を見るには最低でも100MHz程度まで使えるオシロスコープが必要なので、ヤフオクに出ていた極上の中古品を3万3千円弱で入手した。参加する予定だった撮影会は定員オーバーで行けなかった為、その費用を充てたのである。
# 痛い出費ではあるが、仕方あるまい...
アナログオシロを使い慣れた身には、何でもボタン操作のデジタルオシロはなかなか手強いが、こればかりは慣れるほかに手は無さそうだ。
# でも、せめて一機能一ボタンだったらなぁ...(--;

 FMの周波数帯でも使えるようになったので、早速高周波増幅回路内の波形を観察する。
FM高周波増幅回路にプローブを当てる(周波数下限)
この時の受信周波数はチューニングつまみを低い周波数の方に一杯に回し切った状態。
FMの最低周波数に合わせた状態
この周波数にラジオ局は無いけれど、大体77MHz前後になっている筈。ところが、波形を見ると、11MHzほど低い周波数になっている。
FM高周波増幅回路の波形
プローブを当てた事で余分な回路がくっ付いた格好になる為、多少変動するのは避けられないが、それにしても低い周波数になっている。「あれ?やけに低いじゃん...ん?その差は10.7MHzって事??...そっか、輸出仕様だけど回路は国内用のままなのか。」
 スーパーヘテロダイン式ラジオの局発は上側(プラス側)と下側(マイナス側)の2種類があり、海外のFMラジオは上側を使っている。国内のFMラジオはアナログ放送時代のテレビ電波との干渉を避ける為に下側を使っている。だから、「局発周波数=受信周波数-中間周波数(10.7MHz)」となるので、「77MHz-10.7MHz=66.3MHz」となり、この波形とほぼ一致する...ということは、高周波増幅回路だと思っていた部分は、実は局発だったのだ。うーん...(^^;
 念の為に、周波数の上限までチューニングつまみを回し切った状態にして波形を見る。
FM高周波増幅回路にプローブを当てる(周波数上限)
これがこの局発の発信周波数の上限だ。
FM局発回路の波形
という事は、このラジオでは77MHzから90MHzまでの範囲が受信出来る事になる。国内のFMラジオ放送の範囲は76MHzから90MHzまでだから、普通に使える。

 更にあちこちプローブを当てて波形を観察したが、どこも一応それなりに動いているように見える。しかし、聞こえる放送の音声は非常に小さい。「何でぇ?」と思いながら、ラジオ本体を縦にしたり横にしたりひっくり返したりして見回していたら、「カラカラカラ」という軽い音と共に、基板の部品面側からハンダの欠片が数個落ちて来た。「えっ?」と思いながら本体を更に揺すると、細かい破片状のハンダがハラハラと少し落ちて来たが、いくら揺すったり振ったりしてもそれ以上は落ちてこない。
 電解コンデンサを全交換した際には、余分なハンダは全て除去してから作業したので、交換時にハンダのくずなどが入り込んだとは思えない。どうして入ったんだろう???
 「ひょっとしたらFMも動くかも」と思い、電源を入れたらちゃんと動く!ではないか。ハンダくずがどこかをショートさせていたらしい。放送局が無い周波数でも静かだから、スケルチ回路(放送未受信時の雑音をカットする回路)も正常に動いているようだ。

 問題はAMの放送未受信時の雑音だが、色々と調べているうちにアースに手を触れると雑音がかなり小さくなる事に気が付いた。また、動作確認に使っていた電池が弱って使い物にならなり、今使っている電源はスイッチング式のACアダプターだから、そのノイズも交じっているかも知れない。
 いずれにしても、雑音についてはもっと調べないと分からないが、案外車に載せたら収まっちゃうのかも知れない。

 回路とは直接関係ないが、つまみが錆びているので磨いておく。右が磨く前、左が磨いた後である。ちなみに、磨くのに使ったのはNeverDullだ。
ラジオのつまみを磨く
つまみ一個を磨くと、結構な量の錆が取れた。
つまみ一個から出た錆
このつまみは樹脂メッキされているけれど、メッキの部分が錆びて下地の黒い樹脂が点状に顔を出している。これを直そうとすると再メッキが必要になるけれど、素人の手に負えるようなものではないので、錆落としと艶出しだけに留めた。20分ほど磨いて、2個ともそれなりに綺麗になった。
磨き終えたラジオのつまみ
片方だけメッキの劣化が大きいのは、恐らくラジオ選局の為に頻繁に触ったからだろう。

 まだ雑音という問題は残っているものの、ラジオとしてはFMもAMもまともに動くようになった。後は実際に車体に載せて動かしてみてから、また考えるとするかな。

続く
nice!(19)  コメント(6)  トラックバック(0) 

nice! 19

コメント 6

たくや

流石ですね~
by たくや (2014-07-01 03:12) 

Rifle

たくや さん

まぁ何とか修理できました。
でも、こんなに時間がかかっていたら、職業にはできませんねー。(汗)
by Rifle (2014-07-01 09:33) 

ja1nuh

おはようございます。着々と修理進んでますね。
by ja1nuh (2014-07-03 08:49) 

Rifle

ja1nuh さん

こんばんは。順調に見えたのですが、今日の午後エージングしていたらおかしな現象が...再調査開始です。
by Rifle (2014-07-03 20:24) 

たこ

冒頭あたりの前回までで局発(局部発振回路)は10.7MHzと分かっているけれど の箇所ですが、局発がじゃなくて中間周波数が!だと思うんですがいかがでしょうか^^脳内修正できる人はいいけどね。

upsそれはいいけど
そのラジオの修理が終わったら完全ディスクリートFMラジオへのチャレンジをばwww
https://twitter.com/linear_tec/status/1429064777209303041
by たこ (2023-10-29 11:53) 

Rifle

たこさん
あ、そうそうそう!中間周波数ですね、失礼しました。A(^^;)

そういえば、AM放送もそろそろ危なくなってきた(?)んで、ゲルマFMラジオなんぞに挑戦してミヨーかなんて考えている最中だったりします。ちなみに、自宅はFM放送局からかなり離れているんで、かなり難しそうですけど。(--;)
by Rifle (2023-10-29 21:08) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

トラックバックの受付は締め切りました