修理不能:小さな卓上時計 [雑感]
机の片隅に置いてある卓上時計が何故か動かなくなってしまった。
この時計は、拙者が高校生の頃に亡き父が何かの景品で貰って来た物。当初は使わずに押し入れの片隅で惰眠を貪っていた。
拙者が就職し、Unix関係の仕事に関わるようになったが、会社にはまともな図書や資料が無い。「有名コンピュータ会社なのに、なんちゅう酷い会社だっ!」と思いつつも、追われる仕事の為に仕方なく本屋を漁り、休みの日でも自分の机で仕事の本を何冊も読んで技術を磨く日々が続いた。当時使っていた三畳の部屋には時計が無いので不便を感じ、「今使ってない時計ってある?」と父に尋ねたら、この時計が出て来たのである。以来25年以上、視界の中にポツンと存在するという状態が続いてきた。
この時計を長年使い続けた理由はただ一つ、「LR44電池1個で動く」から。手元にあるフィルムカメラの電源はLR44を使うけれど、ある程度電圧が落ちて来ると内蔵露出計が動かなくなる。それでも電池の残量はそれなりにあるので、カメラで使えなくなったら、この時計に入れて使っていた。カメラで使えなくなる頃に、ちょうど時計も電池切れで停まるので、とても都合が良かったのである。
初めは電池切れかと思ったが、新しい電池に入れ換えても動かない。で、分解してみる事に。
枠から外し、直径1.5mm程のネジ2本を抜くと裏蓋が外れる。
アラームはセラミック振動子(黒い蓋に付いている丸い金属)を使っていて、配線は基板にバネ2本を立てて裏蓋の押さえる力を使って接続している。これなら小さな場所にハンダ付けしない分、無用なトラブルを避けられるだろう。一寸感心した。
直径1mm弱のネジ2本を外して透明な蓋を取り外すと、歯車や基板が直接見える状態になる。
肉眼で見る限りでは歯車に異常等は見当たらない。基板を見ると、電池の液漏れによると思われる腐食が発生している部分がある。
基板は歯車の下に潜っているので、歯車を外さないと取り出せない。元に戻す時に困らないよう、一つ一つをデジカメで撮影しながら取り外す。
これでようやく基板を取り出せた。既に乾いているけれど、電池から漏れた電解液は基板全体に行き渡ってしまったようで、あちこちが腐食している。通常の状態では向かって電池が左側、基板は右側にあるのだが、恐らくは毛細管現象で基板の上の方まで液が浸みてしまったのだろう。
細かく観察すると、細い配線が腐食して導通しなくなっている部分があちこちにある。
画像左の黒い部分は時計ICを覆っている樹脂で、そこへ配線が繋がっている。導通の無い個所全てを仮で配線して電池に繋いだが、全く動かなかった。良く見ると、黒い樹脂も一部フワフワになっているから、電解液が内部にも浸み込んでしまったようだ。こうなると、もう修理は不可能である。
なお、この基板の配線はハンダ付けを使わず、全て金属片を配線代わりに使っている。小さくてハンダ付けが難しいからだろう。
序に、そのまま分解してみる。残ったギアは分針や時針を動かす為の物だ。
外した部品を全て並べると、こんな感じ。
機械制御式ではないので、歯車の数は少な目だ。
取り出したコイルの抵抗値を測ってみると、1.7kΩ弱だった。
非常に細い線が巻きつけてあるが、この抵抗値からすると1000回以上巻いてありそうだ。序にインダクタンスも測りたいところだが、残念ながら測定できる機器を持っていない。
基盤がダメになっているので修理は出来なかったが、20年以上動き続けてくれたのだから、これでお役御免という事にしようと思う。
長い間お疲れ様でした。
この時計は、拙者が高校生の頃に亡き父が何かの景品で貰って来た物。当初は使わずに押し入れの片隅で惰眠を貪っていた。
拙者が就職し、Unix関係の仕事に関わるようになったが、会社にはまともな図書や資料が無い。「有名コンピュータ会社なのに、なんちゅう酷い会社だっ!」と思いつつも、追われる仕事の為に仕方なく本屋を漁り、休みの日でも自分の机で仕事の本を何冊も読んで技術を磨く日々が続いた。当時使っていた三畳の部屋には時計が無いので不便を感じ、「今使ってない時計ってある?」と父に尋ねたら、この時計が出て来たのである。以来25年以上、視界の中にポツンと存在するという状態が続いてきた。
この時計を長年使い続けた理由はただ一つ、「LR44電池1個で動く」から。手元にあるフィルムカメラの電源はLR44を使うけれど、ある程度電圧が落ちて来ると内蔵露出計が動かなくなる。それでも電池の残量はそれなりにあるので、カメラで使えなくなったら、この時計に入れて使っていた。カメラで使えなくなる頃に、ちょうど時計も電池切れで停まるので、とても都合が良かったのである。
初めは電池切れかと思ったが、新しい電池に入れ換えても動かない。で、分解してみる事に。
枠から外し、直径1.5mm程のネジ2本を抜くと裏蓋が外れる。
アラームはセラミック振動子(黒い蓋に付いている丸い金属)を使っていて、配線は基板にバネ2本を立てて裏蓋の押さえる力を使って接続している。これなら小さな場所にハンダ付けしない分、無用なトラブルを避けられるだろう。一寸感心した。
直径1mm弱のネジ2本を外して透明な蓋を取り外すと、歯車や基板が直接見える状態になる。
肉眼で見る限りでは歯車に異常等は見当たらない。基板を見ると、電池の液漏れによると思われる腐食が発生している部分がある。
基板は歯車の下に潜っているので、歯車を外さないと取り出せない。元に戻す時に困らないよう、一つ一つをデジカメで撮影しながら取り外す。
これでようやく基板を取り出せた。既に乾いているけれど、電池から漏れた電解液は基板全体に行き渡ってしまったようで、あちこちが腐食している。通常の状態では向かって電池が左側、基板は右側にあるのだが、恐らくは毛細管現象で基板の上の方まで液が浸みてしまったのだろう。
細かく観察すると、細い配線が腐食して導通しなくなっている部分があちこちにある。
画像左の黒い部分は時計ICを覆っている樹脂で、そこへ配線が繋がっている。導通の無い個所全てを仮で配線して電池に繋いだが、全く動かなかった。良く見ると、黒い樹脂も一部フワフワになっているから、電解液が内部にも浸み込んでしまったようだ。こうなると、もう修理は不可能である。
なお、この基板の配線はハンダ付けを使わず、全て金属片を配線代わりに使っている。小さくてハンダ付けが難しいからだろう。
序に、そのまま分解してみる。残ったギアは分針や時針を動かす為の物だ。
外した部品を全て並べると、こんな感じ。
機械制御式ではないので、歯車の数は少な目だ。
取り出したコイルの抵抗値を測ってみると、1.7kΩ弱だった。
非常に細い線が巻きつけてあるが、この抵抗値からすると1000回以上巻いてありそうだ。序にインダクタンスも測りたいところだが、残念ながら測定できる機器を持っていない。
基盤がダメになっているので修理は出来なかったが、20年以上動き続けてくれたのだから、これでお役御免という事にしようと思う。
長い間お疲れ様でした。
おはようございます!
お時計さんも・・ここまで使ってもらい
最終診断もしてもらい幸せだったことでしょう。
by Take-Zee (2015-07-19 07:12)
Take-Zeeさん
お早う御座います。
この時計には、随分と長い間お世話になりました。
いまどきはボタン電池を使う卓上時計はなかなか無いんで、我が家では貴重な存在でした。
by Rifle (2015-07-19 07:26)
いつも楽しく、ブログを拝見させて頂いております。
技術屋としては、何とか復活させてやりたいと思う所ですね。
時計としても、こんなに長く時を刻み続けられたと思いますので、
本望だったのではないかと思います。
機械式の時計と違い、電池式の液漏れはどうしようも無いですね。
by MINERVA (2015-07-19 09:47)
流石に時計の修理は大変ですね。
目眩がしそうw
by ブルル (2015-07-19 20:48)
ブルルさん
部品が細かいんで、可能な限りやりたくない修理です。
今回はギアは問題無かったんですが、基板がダメになっていたんでどうしようもなかったですね。
by Rifle (2015-07-19 22:51)