ヤマハのベースアンプヘッドF100Bオーバーホール(その1) [音楽]
今年3月にヤマハのベースアンプF110-115Bをオーバーホールしたけれど、その際に「どうしてここにこの規格の部品?当時の部品調達の都合なのか?」と感じる部分があった。
先日、出力が同じで回路構成も同じと思われるヤマハのベースアンプヘッドF100Bが、普通では考えられない程の安値で隣の県からオークションに出品されていた。同時期の製造と思われるので、「落札できたら回路を調べて見よう。」
動作未確認の上にかなり酷使されていたらしくて外観が劣化していたこともあり、誰も入札せず超安値のまま落札できた。ヘッドのみだからサイズや重さは知れているけれど、送って貰うと落札額以上の送料が掛かってしまう。お隣の県なので、直接引き取りに行くことに。
先方の都合で日時が決まり、当日引き取りに出かけた。朝から雨が降ったり止んだりという天気だったが、隣の県に入ってからは雨は殆ど降らなかった。田園地帯ののどかな風景で、ワインやビールを片手にボーっと眺めていたい感じだ。
先方は倉庫のような建物で、アンプヘッドはどこからか一括で引き取ってきたうちの一つらしかった。
帰り道は来た時とは違う道を選んで通ったら、面白い像(目印の看板?)があった。
自宅に持ち帰ったら、まずは全体をチェックする。
手荒に扱われていたようで、インプットジャック付近に何かをぶつけたような痕があり、外装の一部が剥げて木部が見えている。電源とベースを繋いで音を出して見ると、一寸強く弾くと音が歪んでしまう。弱く弾けば歪まないので、プリアンプ部で歪んでいるようだ。業界用語を使って一言で表現すると「ヘッドルームが足りない」のである。ベースアンプは歪まないのが普通なので、入力回路に何かしら問題を抱えているのかも知れない。
中身の確認も兼ねて分解する。手始めに取っ手を外してみたら、ネジが1本曲がっている。
かなり強い衝撃を受けたようだ。
電源ケーブルはオリジナルのままだが、プラグが交換されている。
手荒な扱いで断線したのを直したのだろう。
外装の金属部品を外す。どれも錆びている。
一個ずつ真鍮ブラシで磨く。右が磨く前、左が磨いた後だ。
表面の状態が良さそうなので、更に液体コンパウンドで軽く磨く。右が磨く前、左が磨いた後だ。
内部は、一見問題無さそうに見える。
しかし、よく見ると基板には埃が積もっていて、触ると少しネチャッとする。
ボリウムの半田付けが他の部品と色が違うので交換されているらしい。全体の音量を決める「VOLUME」のボリウムには後付けでマイラーコンデンサが付けられている。
ノイズ対策で後付けしたののかも知れないが、今の段階では理由は判らない。
筐体の下側に飛び出しているパワーアンプ部を見ると、放熱板を固定するネジに塗られている緩み止めが割れている。
ここも一度分解されているようだ。分解するとパワーアンプ部の基板が見えてくる。
パワートランジスタを見ると何かが違う。
型番を見ると、モトローラの石MJ15022が使われている。
本来ならここは2SC1586が使われている筈だから、何等かの問題があって交換されたと思われる。しかし、何故hFE(電流増幅率)の低いMJ15022を使ったのだろうか?部品在庫の都合だったのかも知れないが、馬力を稼ぐ部分だけに疑問を感じる。拙者なら、耐圧は落ちるものの、この回路では問題無く使えると考えられる2SD424を使うところだ。
パワーアンプ部の基板を放熱板から外す。
青い色の電解コンデンサは液漏れして頭が少し青くなっている。
回路図作成の為に基板の銅箔パターン面をスキャナで撮りたいので、邪魔になるパワートランジスタのソケットを外す。
古い電解コンデンサを全て外す。
銅箔パターン面をスキャナで取り込もうとして裏をくまなく見ると、トランジスタも交換された痕があった。
ひょっとして、パワーアンプ部を飛ばしてしまったのか???
基板のパターン面をスキャナで取り込んでみたが、部品の足が基板から1㎜程飛び出ているお陰でピントが合わず、何度やってもピンボケになるだけ。諦めてデジカメで撮影し、お絵かきソフトで色やフラックスで見え難くなった部分を書き足してプリンタに出力した。
# 結果的には、パワートランジスタ・ソケットを外さなくて良かった、と。(汗)
新しいコンデンサをハンダ付けし、放熱板に取り付ける。
使ったのはオーディオ用コンデンサだ。
電源部の基板は配線を傷めないように注意しながら外さなければならない。
外したコンデンサは液漏れしていて、頭が膨らんで気泡が入り込んでいる。
新しいコンデンサ(上の黒い部品)はサイズが小さい。
電源部のコンデンサを全て交換すると、一寸風景が変わったように感じる。(笑)
次は細長いプリアンプ部だ。コンデンサを全て交換したら、ボリウムも全て外す。
ボリウムを外した序でに、後付けのマイラーコンデンサも外した。
外したボリウムを一つ一つ分解清掃する。センタータップの無いボリウムを分解すると、摺動面に白い線のようなものが出来ていた。
エレクトロニッククリーナーとNeverDull(ネバーダル:金属磨き)で出来る限り奇麗にする。
センタータップ付きは、何故かどれも摺動面に油分が乗っている。
こちらも同様にできる限り奇麗にした。
全てを奇麗にしたら、元通り基板に半田付けする。なお、後付けのマイラーコンデンサーは取り付けなかった。
最後はブロックコンデンサだ。金具で固定されていて、筐体の穴から配線されている。
外して新しいコンデンサ(上側)と比べると、大きさが倍以上違う。
そのまま入れ替えるだけでは固定金具がブカブカなので、ペンチで曲げてきちんと支えるようにした。
裏側にあるXLR出力は使われていなかったのか、全体的に汚れている。
小さい部分なので苦労したが、ピンセットとNeverDullを駆使して何とか奇麗になった。
筐体は全体的に汚れているし、ネットの部分が破れている。
界面活性剤で清掃したけれど、貼り革が劣化しているせいか見た目はあまり変わらなかった。(汗)ネットの破れは実用には全く関係ないので、あえて補修はせずそのままにしておくことに。
曲がったネジは力尽くで曲げたが、工具が無いのでこれ以上の修正は残念ながら無理だった。
元通り組み立てれば作業はとりあえず完了である。
早速音を出して見ると、やはりヘッドルームが足りないようで強く弾くと歪んでしまう。作業前から予測はしていたけれど、やはりプリアンプ部に問題があるようだ。
となると、まずは配線を追って回路図を起こす必要がある。こりゃぁ面倒な作業になるな...。
(続く)
先日、出力が同じで回路構成も同じと思われるヤマハのベースアンプヘッドF100Bが、普通では考えられない程の安値で隣の県からオークションに出品されていた。同時期の製造と思われるので、「落札できたら回路を調べて見よう。」
動作未確認の上にかなり酷使されていたらしくて外観が劣化していたこともあり、誰も入札せず超安値のまま落札できた。ヘッドのみだからサイズや重さは知れているけれど、送って貰うと落札額以上の送料が掛かってしまう。お隣の県なので、直接引き取りに行くことに。
先方の都合で日時が決まり、当日引き取りに出かけた。朝から雨が降ったり止んだりという天気だったが、隣の県に入ってからは雨は殆ど降らなかった。田園地帯ののどかな風景で、ワインやビールを片手にボーっと眺めていたい感じだ。
先方は倉庫のような建物で、アンプヘッドはどこからか一括で引き取ってきたうちの一つらしかった。
帰り道は来た時とは違う道を選んで通ったら、面白い像(目印の看板?)があった。
自宅に持ち帰ったら、まずは全体をチェックする。
手荒に扱われていたようで、インプットジャック付近に何かをぶつけたような痕があり、外装の一部が剥げて木部が見えている。電源とベースを繋いで音を出して見ると、一寸強く弾くと音が歪んでしまう。弱く弾けば歪まないので、プリアンプ部で歪んでいるようだ。業界用語を使って一言で表現すると「ヘッドルームが足りない」のである。ベースアンプは歪まないのが普通なので、入力回路に何かしら問題を抱えているのかも知れない。
中身の確認も兼ねて分解する。手始めに取っ手を外してみたら、ネジが1本曲がっている。
かなり強い衝撃を受けたようだ。
電源ケーブルはオリジナルのままだが、プラグが交換されている。
手荒な扱いで断線したのを直したのだろう。
外装の金属部品を外す。どれも錆びている。
一個ずつ真鍮ブラシで磨く。右が磨く前、左が磨いた後だ。
表面の状態が良さそうなので、更に液体コンパウンドで軽く磨く。右が磨く前、左が磨いた後だ。
内部は、一見問題無さそうに見える。
しかし、よく見ると基板には埃が積もっていて、触ると少しネチャッとする。
ボリウムの半田付けが他の部品と色が違うので交換されているらしい。全体の音量を決める「VOLUME」のボリウムには後付けでマイラーコンデンサが付けられている。
ノイズ対策で後付けしたののかも知れないが、今の段階では理由は判らない。
筐体の下側に飛び出しているパワーアンプ部を見ると、放熱板を固定するネジに塗られている緩み止めが割れている。
ここも一度分解されているようだ。分解するとパワーアンプ部の基板が見えてくる。
パワートランジスタを見ると何かが違う。
型番を見ると、モトローラの石MJ15022が使われている。
本来ならここは2SC1586が使われている筈だから、何等かの問題があって交換されたと思われる。しかし、何故hFE(電流増幅率)の低いMJ15022を使ったのだろうか?部品在庫の都合だったのかも知れないが、馬力を稼ぐ部分だけに疑問を感じる。拙者なら、耐圧は落ちるものの、この回路では問題無く使えると考えられる2SD424を使うところだ。
パワーアンプ部の基板を放熱板から外す。
青い色の電解コンデンサは液漏れして頭が少し青くなっている。
回路図作成の為に基板の銅箔パターン面をスキャナで撮りたいので、邪魔になるパワートランジスタのソケットを外す。
古い電解コンデンサを全て外す。
銅箔パターン面をスキャナで取り込もうとして裏をくまなく見ると、トランジスタも交換された痕があった。
ひょっとして、パワーアンプ部を飛ばしてしまったのか???
基板のパターン面をスキャナで取り込んでみたが、部品の足が基板から1㎜程飛び出ているお陰でピントが合わず、何度やってもピンボケになるだけ。諦めてデジカメで撮影し、お絵かきソフトで色やフラックスで見え難くなった部分を書き足してプリンタに出力した。
# 結果的には、パワートランジスタ・ソケットを外さなくて良かった、と。(汗)
新しいコンデンサをハンダ付けし、放熱板に取り付ける。
使ったのはオーディオ用コンデンサだ。
電源部の基板は配線を傷めないように注意しながら外さなければならない。
外したコンデンサは液漏れしていて、頭が膨らんで気泡が入り込んでいる。
新しいコンデンサ(上の黒い部品)はサイズが小さい。
電源部のコンデンサを全て交換すると、一寸風景が変わったように感じる。(笑)
次は細長いプリアンプ部だ。コンデンサを全て交換したら、ボリウムも全て外す。
ボリウムを外した序でに、後付けのマイラーコンデンサも外した。
外したボリウムを一つ一つ分解清掃する。センタータップの無いボリウムを分解すると、摺動面に白い線のようなものが出来ていた。
エレクトロニッククリーナーとNeverDull(ネバーダル:金属磨き)で出来る限り奇麗にする。
センタータップ付きは、何故かどれも摺動面に油分が乗っている。
こちらも同様にできる限り奇麗にした。
全てを奇麗にしたら、元通り基板に半田付けする。なお、後付けのマイラーコンデンサーは取り付けなかった。
最後はブロックコンデンサだ。金具で固定されていて、筐体の穴から配線されている。
外して新しいコンデンサ(上側)と比べると、大きさが倍以上違う。
そのまま入れ替えるだけでは固定金具がブカブカなので、ペンチで曲げてきちんと支えるようにした。
裏側にあるXLR出力は使われていなかったのか、全体的に汚れている。
小さい部分なので苦労したが、ピンセットとNeverDullを駆使して何とか奇麗になった。
筐体は全体的に汚れているし、ネットの部分が破れている。
界面活性剤で清掃したけれど、貼り革が劣化しているせいか見た目はあまり変わらなかった。(汗)ネットの破れは実用には全く関係ないので、あえて補修はせずそのままにしておくことに。
曲がったネジは力尽くで曲げたが、工具が無いのでこれ以上の修正は残念ながら無理だった。
元通り組み立てれば作業はとりあえず完了である。
早速音を出して見ると、やはりヘッドルームが足りないようで強く弾くと歪んでしまう。作業前から予測はしていたけれど、やはりプリアンプ部に問題があるようだ。
となると、まずは配線を追って回路図を起こす必要がある。こりゃぁ面倒な作業になるな...。
(続く)
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