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電子ピアノPianoPlus20の簡単なメンテナンス [電子回路]

 子供がリサイクルショップで仕入れて来たローランドの電子ピアノ「PianoPlus20」(品番:HP-20)は普通に使える状態だが、子供曰く「YouTubeなんかで聞く音と随分違う」と。
ローランドHP-20
1984年頃の製品だから、35年程経過している。となれば、当然内部の部品は劣化して音が変わってもおかしくない。必要な部品を発注してメンテナンスすることに。

 側面と底面のネジ数本を外すと本体上側の金属製の蓋が開く。
上側を開けたところ
左側にトランス、電源回路(右下の基板)、アナログ出力回路(中央上の基板)がある。
内部の左側
右側には音源基板がある。
内部の右側
音色が2つしかない為か、基板も思ったより小さい。載っているチップを確認する。
音源基板上のIC
左上のM74LS42PはBCDデコーダー、TC4050BPは非反転バッファ、40ピンのD8048Cは8ビット・マイコン、M5L8253P-5はプログラマブル・インターバルタイマー。M5L8253P-5は基板上に3つある。
M5L8253P-5が3つある
基板の右側はキーボードからの入力を受ける回路が並んでいる。
IMG_3897.JPG
TC4013BPはDタイプ・フリップフロップで、鍵盤の接点が不安定であってもきちんと音が出るようにする為に使われているようだ。
# ちなみに、フリップフロップを直訳すると「ギッコンバッタン」。(笑)
この部分のコンデンサだけ色が違い、比較的新しい物が使われているので、一度メンテナンスが行われているらしい。

 まずはアナログ出力回路から作業を始める。まず、基板を取り外す。
アナログ出力基板を外しているところ
基板上の電解コンデンサをオーディオ用に交換するが、470μFはサイズが大きい。
オーディオ用はサイズが一回り大きい
このまま取り付けると頭が閊えて基板が取り付けられない。とりあえず470μFを外し、LEDに嵌められているカラーと比べて見る。
LEDの支えと電解コンデンサの高さが同じ
思った通り、高さはほぼ同じだ。このサイズを基準にして設計されているので、そのままオーディオ用を取り付ける訳には行かない。横倒しにすると、何とか入りそうだ。
横倒しなら入る
横倒しなら入る
閊えずに収まると判って一安心。(笑)
横倒しなら閊えない
実際に半田付けすると、こんな感じとなった。
コンデンサを交換したアナログ出力基板
ガリが出ているボリウムを2つ共外す。
ガリが出ているボリウム
スライドボリウムを分解したら、中は何故か粉だらけ。
スライドボリウム内部は粉だらけ
エレクトロニッククリーナーとNeverDull(ネバーダル:金属磨き)でクリーニングする。スライドの接点もかなり汚れている。
接点:清掃前
細いので折ってしまわないように注意しながらNeverDullで磨いたら、奇麗になった。
接点:清掃後
丸いボリウムも内部はかなり汚れている。
丸いボリウムも内部は汚れている
同様にクリーニングした。
丸いボリウムをクリーニングしたところ
元通り組み立てて、基板に取り付ける。

 次は電源回路だ。
電源回路基板
一番大きい4700μFのコンデンサを外したら、基板に何か漏れたような痕がある。
基板上に漏れたような痕がある
外したコンデンサを見ると、やはり液漏れを起こしている。
コンデンサは液漏れしている
基板をエレクトロニッククリーナーで奇麗にしてから取り付けた。
# 交換後の基板の画像を撮り忘れてます...A(^^;)

 次は、音源回路の基板だ。
音源回路基板
ネジを外しても外れないので、「あれ?」と思ったら、裏側にアースの配線があった。
基盤裏側にアース配線がある
この基板にはトランジスタ2SC1740が沢山使われている。
2SC1740が沢山
デジタル回路なので「オーディオ用に交換するまでも無いかなぁ?」とは思ったが、何度も分解するのは手間なので、全て交換した。
コンデンサ交換を終えた音源基板
電源ケーブルは断線気味なので、今回一緒に取り換える。黒い配線が電源ケーブルだ。
電源回路部周辺の配線
使われているケーブルは125V7Aまでの比較的細いケーブルだが、何故か自宅周辺のホームセンターでは売られていない。代わりに、300V7Aまでという「スピーカーケーブル」を仕入れて来た。
代わりにスピーカーケーブルを用意
HP-20の消費電力は15Wだから、問題無いだろう。プラグを取り付けて、
プラグを取り付けたところ
本体に配線する。
本体に配線したところ
後は元通り組み立てて完成である。
 序でに、古い方の電源ケーブルを測ってみたら、抵抗値は最大でも0.2Ωだった。一寸した事にはまだ使えそうなので、こちらもジャックを取り付けて延長ケーブルとして使えるようにした。
ジャックを取り付けたところ

 HP-20は入門モデルだが、内部は実にしっかりと作られている。
 今時ならグルーで配線をまとめたりするのが多いけれど、この製品はちゃんとした樹脂部品とタイラップで固定している。
 それに、基板や外装に取り付けられた鉄板には、全てアース配線が施されていた。恐らくノイズ対策の為だろうが、これほどきっちりした作りは昭和の時代ならでは、だ。「いやぁ、昭和の時代はまじめに作っていたんだなぁ」と感心した。

 子供に音出しして貰ったら「こんな音だったっけ?」って。(笑)信号経路上にある電解コンデンサの劣化で音がかなり変わってしまっていたららしい。今回の作業で、少なくとも出てくる音に関しては新品の頃に戻っている筈だから、その差はかなり大きかったようだ。
 めでたしメデタシである。
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middrinn

YouTubeとか無い時代は劣化してるとか分からなかったわけですね( ̄◇ ̄;)
にしてもハズキルーペみたいなのが必要な細かい作業が多いですねぇ(@_@;)
by middrinn (2019-07-20 06:45) 

Rifle

middrinnさん
以前は本来の音を知る方法がありませんでしたが、今はネット上を漁れば大抵は出て来るので、本当に便利な時代になりました。
この時代は実装密度が高くないので、まだ救われてます。(^^;)
by Rifle (2019-07-20 11:25) 

mayu

中はこうなってるんですね
私には わけわかりません(>_<)
by mayu (2019-07-20 13:45) 

Rifle

mayuさん
見ただけで分かったら技術者ですよ。(^^;)
普通は内部を見る機会が無いでしょうが、この手の機材はシンプルなのが多いです。
by Rifle (2019-07-20 14:07) 

らしゅえいむ

基盤、コンデンサー・・・
手が出せません。(+_+)
びっくりしながら、拝見いたしました。
by らしゅえいむ (2019-07-20 19:01) 

Rifle

らしゅえいむさん
一寸したコツを知っていれば簡単で、誰でもできますよ。
まぁ、コツを掴む為には大学へ通う必要があったっりしますけど。(^^;)
by Rifle (2019-07-20 20:27) 

ktm

VR のガリ対策に
「エレクトロニッククリーナーとNeverDull(ネバーダル:金属磨き)」
勉強になりました。
by ktm (2019-07-21 21:54) 

Rifle

ktmさん
他の方法もあるかも知れませんが、手持ちの機材の範囲で処理するとこうなった、という感じです。
お役に立てれば幸いです。
by Rifle (2019-07-21 22:58) 

みうさぎ

昭和良い仕事してたに
決まってます
モノづくり日本!
そして修理の Rifleさま~
ナンバーワン~
こんなもんで
宜しいですかぁ
ゴリゴリ~
( *´艸`)
ゴリゴリは聞こえなかったことしてください
うふっ

by みうさぎ (2019-07-22 17:41) 

Rifle

みうさぎさん
平成以降、日本製品は劣化しちゃいましたねー。
「ゴリゴリ~」って?(^^;;;;
by Rifle (2019-07-22 19:26) 

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