SSブログ

ちょい古なEL発光卓上時計の簡単な修理 [雑感]

 子供が使っていたクロック(卓上時計)は、部屋の模様替えで不要となったと言う。
古い卓上時計
この時計は、親戚宅の荷物整理を手伝った際に「使うのならあげる」と頂いた物。
 長らく子供が使っていたが、机から落としてしまったらその後動かなくなっていたそうだ。裏側を見ると、電池室の蓋の一部が割れている。
裏ブタに割れがある
落とした時の高さは、机から畳までの40㎝程度。そんなに大きな衝撃ではないと思うので「どうせ内部で配線が切れたとかっていう程度でしょ。」早速直す事に。

 裏側に2か所ネジがあるので、それを外す。
ネジ穴が二か所ある
蓋を外すと、配線は外れていないが、蓋を支える樹脂の支柱が折れていた。
蓋を外したところ
支柱は太さ数ミリで、根本まで同じ太さ。これでは落下の衝撃には耐えられないかも知れないなー。
折れた支柱
単三サイズの電池ボックスは、液漏れの痕がある程度で、一見問題無さそうに見える。
単三電池ボックス
しかし、マイナス側の電極を支えている樹脂部分が割れてグラグラになっていた。
支える樹脂部が割れている
これでは電池をしっかりと保持できず、接点が浮いてしまう。動かない原因はここだった。
 電池ボックスを修理すれば元通り使えるけれど、ハーマンのビルトインコンロで使えなくなった単一電池がまだ数本ある。「じゃぁ、単一電池が使えるようにしよっか。」

 念の為に、更に分解して内部を確かめておく。まず配線を確認する。
配線を確認
赤と黒が電池につながっている1.5Vの電源ライン、白と青はEL発光部に繋がっている。EL駆動回路を外したが、配線は正常だ。
配線は切れていない
針を抜かないと分解できないので、表側の灰色の枠を外す。
灰色の枠を外す
裏側にネジ類が無いので、はめ込みとなっているのが判る。細いマイナスドライバーで隅から抉ったら開けられた。
前面を開けたところ
組み立て易いように予め針を12時ピッタリに合わせてから外し、更に文字盤を外すと、何やら白い樹脂の板が入っている。
白の樹脂板
樹脂板を取ると、丸いEL発行体が見える。
白いのはEL発光体
EL発光体は接着されているので、剥がさずにそのままにしておいた。
 時計モジュールは、筐体の爪で固定されているだけだ。
筐体の爪で固定されている
4か所の爪を外すと、時計モジュールが外れた。
時計モジュールを外したところ
モジュールのカバーを外して中を確認したが、問題無さそうだ。
モジュール内部は正常
電池のマイナス電極は熱圧着で固定されている。
マイナス電極は熱圧着
この部分の樹脂は厚みが薄いし、電極を外さないと樹脂部の修理は難しいので、今回はあえて何もせずこのままとした。

 序に、EL駆動回路も確認する。トランジスタ2SC945が使われている。
EL駆動回路
パッと見た感じでは、トランジスタ1石で発振させ、小さなトランスで昇圧しているようだ。序に、オシロスコープで確認した。
EL駆動回路の波形
駆動回路の出力波形は、100V・2kHzだった。ELの駆動周波数上限が2kHzなので、ギリギリ範囲に収まっている。電流は測定していないけれど、電池駆動で発行体の面積も小さいので、多分10mAも流れていないと思う。駆動回路を回路図にすると、こんな感じとなる。
EL駆動回路
EL発光体の寿命は周波数が高いほど短い為、通常の回路は800Hz前後が多いらしいが、周波数が低いと発光量も落ちる。この時計が製造された頃はELが市販化されて間もない頃だったから、寿命に関しては未知だったのかも知れない。

 回路は問題無いので、修理に取り掛かる。
 まず、樹脂の支柱をハンダ作業台のワニ口クリップで掴み、細かく調整して元の位置になるようにする。
ワニ口クリップで位置調整して固定
根元にプラリペアをたっぷり流し込んで固定する。
プラリペアを流し込んだところ
1時間ほど経ったらほぼ固まっていたけれど、念の為に24時間放置する。

 次に、くすんでいる透明樹脂の蓋を磨く。磨く前は擦り傷などで全体的に白っぽくなっていた。
細かい傷で濁っている
細かい傷を消して新品のようにするのなら、耐水ペーパー千番辺りで全体を磨き、二千番・四千番と番手を上げて磨いてから超微粒子タイプのコンパウンドで磨くのだが、今回はそこまではやらずに、超微粒子タイプのコンパウンドで細かい傷だけを取る事にした。
超微粒子タイプのコンパウンド
右半分を磨いたら、結構違いが出ているのが判る。
右半分を磨いたところ
全体を磨いたら、おまけでGT99で傷消しを試みた。
樹脂傷消し材GT99
残っている傷は幅が広い為か、殆ど効果は無かった。
見た目では殆ど変化なし
組み立てる前にEL発光体の動作も確認したが、問題無し。
ELの動作テスト
電池室の樹脂が割れていて完全には固定できないので、電池室側はホットメルト(グルー)で固定する。
ホットメルトで固定した
単一電池ボックスの配線を電池室の蓋を取って通し、配線もホットメルトで固定する。
単一電池ボックスの配線もホットメルトで固定
単一電池ボックスは、時計本体横にホットメルトで固定した。
時計横にホットメルトで固定
針を取り付けてから蓋をすれば完成である。
修理の終わった時計
通常時の見え具合はこんな感じで、
通常時
EL発光時はこんな感じ。
EL発光時
マンガン電池を入れて、時刻を合わせたら、修理完了。
時刻を合わせたところ
これで使えるようになった。目出度しメデタシ、である。
nice!(20)  コメント(3) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

nice! 20

コメント 3

Take-Zee

おはようございます!
いつもながらあっぱれ!です。
このくらい丁寧な記事だと分かりやすくて
いいですね!

by Take-Zee (2022-03-01 07:15) 

みうさぎ

メデタシめでたしだわ

by みうさぎ (2022-03-01 08:00) 

Rifle

Take-Zeeさん
修理作業中は画像を沢山撮影しているんですが、ブログに使うのは大抵ほんの少しです。
今回は画像を大めにしたんですが、画像アップロード中に容量が足りなくなり、追加申請しました。(^^;)

みうさぎさん
電池ボックスが一寸不格好ですが、普通に使えるようになりました。(^^;)
by Rifle (2022-03-01 11:37) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。