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ジャンクRAT2の修理 [音楽]

 押し入れの中を久し振りに整理していたら、こんな物が出てきた。
発掘品
PRO-coのディストーションペダルRAT2である。「欠品多数・音出ず」でフットスイッチすら無く「前所有者は一体何やったん?」と勘繰りたくなるようなジャンク品の状態で、異様に安く売りに出されていた。
# 千円でおつりが出たんだからねぇ。
「欠品だけなら簡単に直せるでしょー」と思って手に入れた。でも、普段ディストーションの類は殆ど使わないので「まぁそのうちにきちんと修理しましょ」と仕舞い込んだまま10年近く放置してあったのであーる。(滝汗)改めて状態を確認する。
 本来なら黒いツマミが付いている筈なんだけど、全部欠品。
ツマミは全部欠品
ジャックも3つ共ナットが欠品していたので、入手直後に手元にあったナットを適当に取り付けてある。
ジャック部
電源ジャックだけは合うナットが無くてそのままになっている。なお、米国製品なので、電源ジャックは国内で使われている「真ん中にピンのあるジャック」ではなく、イヤホンなどに良く使われている3.5mmΦのフォーンジャックである。
 裏側はネジが全て欠品だったので、手持ちのネジで入手直後に電池室の蓋だけ留めてある。シールを剝がしたと思われる痕が見苦しい。
裏側
入手直後に手持ちの3PDTフットスイッチを一応取り付けたものの、配線を追うのが面倒で「まぁそのうちに」と仕舞い込んだ。そうしたら10年近く経ってしまった、という訳。(汗)
 内部は基板一枚だけでとてもシンプルな作りだ。
内部は基板一枚だけ
オペアンプはモトローラ社製LM308N(既に廃番)が使われている。
モトローラ社製LM308N
基板を取り出す。黒い点は入手直後にグランドライン確認の為にマジックで書き入れた。
取り出した基板
基板のリビジョン(版)は「L」だ。
Rev.Lの基板
使われている部品は全て汎用品で、ボリュームポットは米国品に良く使われているCTS製。ポットデイトに依れば、このポットは1992年50週目の製造である。赤いLEDが追加されたRAT2は1988年からの製造なので、このRAT2はモデルチェンジから4年ほど経った頃のモデルという事になる。製造されてから既に30年近く経過しているけれど、電解コンデンサに頭部の膨らみなどは見られない。
汎用品が使われている
黒のマジックは、入手直後に配線を調べるのに書き込んだもの。いい加減に調べただけでフットスイッチを配線したので、音は出なかった。(汗)
 ここでまた放置すると、本当に修理するのが何年後になるのか分からないので(^^;)、きちんと調べる事に。

 基板を撮影してプリンタで印刷し、そこに部品の情報を書き込む。
部品を書き込んだところ
これを元に回路図を書き起こし、配線を確認。それで分かったのが「フットスイッチ部はミレニアム・バイパスになっている」事。ネット上を漁ったら、確かに「ミレニアム・バイパス」とあちこちに出ている。(汗)
 回路さえ分かってしまえば、後は簡単。フットスイッチを配線し直せばOKだ。
フットスイッチを配線したところ
ちなみに、拙者が入手した当時にはそんな情報は無かったから分からなかったけれど、ミレニアム・バイパスはRAT2で有名になったようだ。

 ミレニアム・バイパス(Millenium Bypass)は、どうしてそういう呼び名が付いたのかは知らないが、2000年前後から使われ出した回路方式だからそのような呼び名になったんだろうと思う。
 1990年代までは、エレキギター用エフェクターはエフェクトOFF時でもバッファー回路を通して音が出るバッファード・バイパスが一般的だった。これには理由がある。
 エフェクトON・OFF時には回路の入出力が切り替わるので、バッファー回路の無いトゥルー・バイパス(True Bypass)にするとフットスイッチを押す度に「ボッ」という音が出てしまう。エフェクト回路への電源供給のON/OFFによるノイズと、入出力の切り替えによって発生するノイズの両方で発生するのだけれど、特に大音量で演奏する場合などはこの切り替えノイズが大きな問題になってしまうのだ。

 そこで入出力にバッファー回路を入れ、スイッチ切替時の音が出ないように切替タイミングを(電気的に)微妙に調整する事でノイズを消している。但し、エフェクトOFFでも電源を消耗するとか、複数のエフェクターを接続するとバッファー回路を何段も通過する事になって音の劣化が気になるといった副作用もある。
 バッファー回路は「入力信号を忠実に後続の回路に渡す」役割を担っているけれど、現実には増幅素子や受動素子を通過する際には信号の僅かな劣化は避けられない。だから、何段も通過すればどうやっても劣化は避けられないのである。
 それでもバッファード・バイパスが使われ続けたのは、フットスイッチが高価な3PDPタイプ(3回路2接点)でなくても比較的安価なDPDTタイプ(2回路2接点)で済むという、もう一つの理由もあったのだ。現在は3PDPタイプも価格が下がってきてて、以前のような価格差では無くなりつつある。

 欠品していた筐体のネジは、手持ちの中から合いそうなのを探して付けた。シール痕も頑張って剥がした。
ネジを付けたところ
ツマミは、まとめ買いしてあった手持ちの部品を使った。米国製のポットは軸の太さが少し太いけれど、何とかツマミを押し込んだ。(笑)
ツマミを付けたところ
元々はツマミもブラックでモノトーンに纏められているのだけれど、少しカラフルになってしまった。(笑)
 早速音出ししてみたら、全く問題無く動作した。

 実は、まだ学生の頃RATの初期バージョンを使っていた事がある。
 確か当時購読していたギターマガジンのインタビュー記事だったと思うのだが、ギタリストJohn Scofieldが「ギター側のボリュームを絞ればクリーンになり、開けばラウドになる。こんな事ができるエフェクターはRATしかない」というのを読んで「おぉ!そんな便利なエフェクターがあるんか」と、当時頻繁に出入りしていた楽器店(倒産前の名古屋・栄の名曲堂!)で購入したのだった。
 でっ、自宅で使ってみると「あれ?ボリューム絞ってもクリーンにならない??」当時使っていた機材は練習用のトランジスタ10Wギターアンプと、フェンダージャパンが設立されて間もない頃に新品!で購入したローズ・フィンガーボードのストラトだった。技量不足と機材不足の相乗効果だったんだろうと思うけれど、どうやってもJohnの言うような事は出来ず、がっかりした覚えがある。
 それから5年ほど経った頃にWal5弦フレットレス購入資金に充てる為手放してしまったけれど、「そのまま持っていればなー」と後悔している。
 当時の記憶と比べると、出てくる音はネット上で言われているほどの差は無いように思う。けれど、拙者は元々ディストーションの音に対しては強い拘りなどは無いのでそう感じてしまうのかも知れない。

 書き起こした回路図を改めて見ると「何でここにこの耐電圧の部品?」と感じる所が多い。
 電源は9Vだから耐圧は16Vもあれば十分だけど、信号経路上のコンデンサは全て50V以上の物が使われている。マイラー・コンデンサなら汎用品の耐電圧は50Vでそれ以下の物は見かけないから分かるけれど、電解コンデンサは耐圧63Vの物が使われている。「部品調達時の価格で選んだのかなー」とも思う。
 ネット上では「回路設計だけでなく、使う部品の選定にも複雑な理論や理由がある」と書かれている事が多いけれど、拙者は「へぇー?そうかーぁ???」って。(笑)まぁ、知らんだけなのかも知れんけど。(爆)

 とりあえず、普通に使えるようになったのだから、目出度しメデタシ、である。
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